　私は金曜日が待ち遠しい。

「じゃ、先に出るよ。今夜はいつもの場所で」

「ん。いってらー。って違う違う、今日は私も早出だった。急がなきゃ」

「はは、相変わらずだね」

「相変わらず言うなし。じゃ、夜にね」

　私はパソコンの電源を切ると普段（いつも）より一時間早く家を出た。

　凡そ二年の交際を経て同棲を始めてから僅か一ヶ月後に彼の急な出張が決まると、同棲生活の出端を挫かれた私達はその出張期間をネット同棲期間とした。

　ネット同棲とは、互いに外出予定のない日の夜とほぼ毎朝の生活風景をパソコンのライブ映像で共有する事であり、始めてから既に三週間が経った。

　文明の利器は素晴らしく、直接会わずとも互いが近くに感じられる。

　しかし、やはり本来ならば同棲ほやほやの私達は直接会いたいもので、彼は金曜日の夜になると帰ってくる。私はそれを駅まで迎えに行く。

　金曜日の夜から日曜の夕方までの逢瀬…

　金曜日は彼と会える日。

　これが私のはなきんフライデイ。

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