夕暮れ刻の憧憬@女の想いと男の理性

「なっ……!?」


 思わぬ事態に俺は言葉を失った。

 密着した肉体からだから伝わる体温が否応なしに鼓動を高鳴らせ、視線を逸らす行為ことを許さないかの様に上目遣いで真っ直ぐ見つめるうるんだ瞳が俺の思考を停止させた。


「これは…、です」


 彼女はそっと呟いた。か細い声と共に届けられるしなやかな黒髪が放つほのかなトリートメントの香り、普段いつもより近くで感じるが俺を緊張させた。


「ねえ先生…私、先生がロングが好きだって言ってたから髪伸ばしたんですよ」


 甘えた声色で呟く度に揺れ動くつややかな唇が俺を惑わせた。


 放課後の教室、突然抱きついてきた彼女は普段いつもの大人しいという姿とは全てが異なり、その仕草と振舞いは俺の中にある理性という柵を壊してしまいそうな程に魅惑的で、そして魅力的だった。


「先生は…私が嫌いですか?」


 


 好きかではなく、嫌いかと問い掛けた彼女の声は微かに震えていた。


 俺は教師で彼女は生徒だ…

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