春雨の降る日曜日@抱えた本と優しい彼

 地下鉄を降りて地上へと出ると雨が降っていた…


「どうしよ…」


 思わず呟いた私の腕の中には古本屋で買った三冊の本が入った紙袋があった。


 雨は私の抱える本を濡らすには十分な強さで降り続けている…


 なら家までの徒歩十数分の道程を濡れて帰るのも悪くないが、この三冊の本はどれもネットでも滅多に出回らない希少本、そんな本を濡らすなんてもってのほかだ。


「ロッカー代もないし…ほんとどうしよ……わっ!?」


 降りしきる雨を眺めながら独言ひとりごとを呟いた私の肩へ不意に誰かの手が触れた。


「よっ、久し振り。これ貸してやるよ。じゃ、俺あっちだから」


「えっ!?…あ、ちょっと待っ…行っちゃった…」


 それは中学校の卒業式に私へ告白した同級生の男子だった。

 彼は本を抱えている私の手首に傘の取っ手を掛けるとと笑い、より強くなった雨の中を走っていった。


「なんで優しく出来るの…私、君をんだよ…」


 春の終わりを告げる様な雨の降る日曜日だった…

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