主人公はミス・バレンタイン@私が主人公

 明日は二月十四日。


『バレンタインには好きな人にチョコを贈りましょう。』


 今は昔と言われようとも、起業の策略と言われようとも、私はこの日に行われてきたその風習イベントを以て自分の人生の主人公ヒロインになる。


 そして当日。


「先輩、これチョコレトです。受け取ってください」


「ありがとう。俺甘いもん好きだから嬉しいよ」


「!?そ、それでは失礼します」


 私は憧れの先輩にチョコを渡すと上級生で溢れる廊下からそそくさと立ち去った。


(やった!受け取ってくれた!これで私はヒロイ…ん?)


 その時、違和感が私を襲った…

 何かがおかしいと感じた私はほんの少し前を振り返った。


「…あっ!ったー!!」


 私は気づいた。


『チョコを渡しただけで告白してない…』


 つまり、先輩は古い風習イベントを模した贈り物だと思っていない。

 私は自らの失敗ミスから主人公ミス・バレンタインになり損ねた。

 勿論、告白しても成功したかはわからないけれど、この日に告白すると決断きめた私の覚悟が一つの失敗ミスで台無しだ。

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