街時間@徒然なる休日

 鼻を通り抜ける空気は冷たく、頬を撫でる風が肌を突く様に感じる凍てつく冬の休日。


「それで───」


「だから───」


「───とか言ってさ」


 買い物帰りの私の耳に行き交う人々の声が次々と入ってくる。

 友人、恋人、家族、或いは会ったばかりの他人同士なのかも知れない。

 普段は手にした携帯電話スマートフォンへと視線を送りながら足早に歩を進め、周囲の他人ひとを無視する人々も休日には自分とつながりを持つ他人ひとと共に前や横を視ながら街を歩く。

 普段とは異なる時間がそこにある。それはきっと、誰かと共有する街時間まちじかん


 休日の街には家の中や平日の街とは異なる時間がある。

 街に出た人々は互いの人生の中で結ばれたつながりという名の糸を紡ぐ様に他人ひとと時間を共有し、普段はばかり視ている目線を上げて歩く。


「あー寒かった」


 帰宅した私は街でを部屋の中に吐き出しながらポツリと呟き、携帯電話スマートフォンを取り出した。


「あいつ今暇かな…?」


 私は友人に電話を掛けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る