想い出割増@とある古着屋の話

 この古着屋は少し変わっている。

 何が変わっているのかというと…


「七点で八万円になります」


「八万かあ、もう少し頑張れない?それなりのブランド物だしヴィンテージ扱いとかでさあ」


「現行モデルでヴィンテージというのはちょっと。あ、でしたらこの品々に纏わる話とかありません?無ければでも構いませんよ。話の内容次第で増額致します」


 店主の女がそう言うと、客は少し考えた後でゆっくりと口を開いた。


「───という物なの」


「へえ、素敵ですね。初任給でこれと同じモデルのコートを妹さんに贈ったその数年後に妹さんが初任給でこのコートを贈ってくれたと。オッケーです。一万円増額しますね」


「ありがとう」


「ところで今のお話は?」


「出任せよ。私は独りっ子なの」


「ふふ、そうでしたか。ではこちら点で九万円です。もしまた何かありましたらと共に御来店を」


 こうして、この古着屋は今日も想い出と共に衣服を買い取っている。

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