秋の川@蜃気楼を追い掛けて

「やばっ!冷た!」


「秋だからね」


 共に過ごす最後の夏が終わり、蝉の声がまばらになってきた九月下旬。君は学校帰りに突然靴を脱ぎ捨てて裸足になり、秋の川へと足を踏み出した。


「早く来なってー。いま入っておかないと夏はもう戻ってこないよー」


「いやもう普通に秋だし…」


 僕は小声で呟きながら裸足になって君が待つ川へと足を踏み出した。


つめて!」


「あはは、でしょー。マジ冷たいよねー」


「いやいや笑い事じゃないって。ダメダメ、これはない。上がろう、風邪引くって」


「足だけならヘーキだって。もし風邪引いたら私が看病してあげるからもう少しだけを味わおう、ね?」


 夏の気分を…

 そう言って君は少しさみしそうな笑顔を僕に向けた。

 過ぎた日々を振り返ると夏はもう蜃気楼の様に消え去り、想い出の中にある君との時間が現実だったのかも曖昧に思えるくらい懐かしかった。

 僕らはその日、陽が暮れるまで最後の夏を

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