サウンド・トゥ・セイグッバイ@別れの音

 カチン…


 夜明け前の空に吸い込まれたその静かな音は俺の心に深く刻まれた。


 さよなら…


 中で眠っている愛しい人を起こさない様にやさしく閉めた鍵の音が俺の別れの言葉だった。

 最後の日、最後の夜、最後の笑顔…

 愛しい人は別れの涙を堪えて俺にはなむけの笑顔を見せてくれた。

 愛を語り、夢を語り、未来を語ったこの場所から俺は旅立つ。

 二人で過ごしたこのに愛しい人を一人残して俺は出ていく。

 この先は苦楽を共には出来ない。

 愛しい人に想い出だけを残して俺は戦地へとおもむく。

 誰かを傷つけるためじゃなく、誰かの想いを皆に伝えるために俺はく。


 カチン…


 扉に背を向けた時、後ろから鍵を開ける音がした。

 その音は「またね…」と言っている気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る