閃光花火@恋は終わるまで終わらない

「好きだ!」


 空に輝く大輪の花が響かせる轟音に負けないように僕は言った。

 しかし、その声は届かなかったのか、隣にいる普段いつもより綺麗な彼女は空を見上げたままだった。


「好きだ!」


 空を彩る閃光と轟音に包まれながら僕は大声で言った。

 ほのぐらい公園のベンチに座って空を見上げる彼女の横顔が閃光に照らされる度に僕は繰り返した。

 太陽の下で面と向かって想いを伝える勇気のない臆病な僕のその無様な告白さけびは、夜空の静寂が戻るのと共に終わった。


「…終わっちゃったね、花火」


 聞こえていない筈がない…

 それなのに彼女はただ一言そう言った。

 それが何を意味しているのかすぐにわかった。


「…帰ろうか。送っていくよ」


 今にも溢れ出しそうな涙を堪えて僕は言った。

 僕は失恋の痛みを知った…




























































「送ってくれてありがと。あ、そうだ」


 彼女の家の玄関先の事だった。


「なに?」


「次はちゃんと私の目を見て伝えてね。。じゃね」


 別れ際の一言が僕の失恋を否定した。

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