SNS -Sleepless Night Story-@心の壁は消えさった

 トントン…


「起きてます?」


 トントン…


「起きてますよ。どうかしましたか?」


 私はその声に何故だかホッとした。

 仕事で失敗へまをした日の夜、私は自分からお隣さんに声を掛けた。珍しく独言ひとりごとしていたお隣さんは私の呼び掛けに快く応えてくれた。

 普段いつもは迷惑と感じていたお隣さんの欠点がこの日は恋しかった。

 初めて壁を叩いて抗議してから一年近くが経ったが、自分がへこんだ日に限って独言が聴こえない事が酷く淋しかった。

 人として身勝手な話とはわかりつつも私はそれを言葉くちにした。


「あの…今日は普段いつもはナシですか?」


「アレ?……あ、はい。今日はちょっと…」


「なにかありました?」


 お隣さんの声がいつもよりも暗い気がした私は思わず訊いていた。


「いえ別に………いや、本当は仕事で失敗ミスしてしまいまして」


「そうなんですか?……実は私もなんです」


 その日、壁越しの会話は私がするまで続いた。

 以来、私達は壁越しに会話をする仲になった。

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