ファーストコンタクト@グラッシーキス

 ガチッ…


「あ…」


「あ…」


 その音が響いた瞬間、僕らは互いに声を漏らした。

 互いに初恋である僕らのファーストキスのファーストは相手の唇ではなく眼鏡のフレームだった。


「ふふ、ふふふふ」


「はは、はははは」


 あまりにも不器用なその結果に僕らは笑い合った。その笑いは嘲りも侮蔑もない爽やかな笑いだった。


「……それじゃ、もう一度やり直そっか」


 一頻り笑い合った後で君がそう言った。

 僕が「そうだね」と答えると君は再び緊張した面持ちで瞼を閉じた。

 それを確認した僕は自分自身が掛けていた眼鏡を外し、その後で少しボヤけた視界の中にいる君が掛ける眼鏡をそっと外した。

 そして、息を止めながら顔を近づけて君の唇に僕の唇を重ねた。


「………ねえ、今度一緒にコンタクトつくりに行こう」


 キスを終えた後で君は言った。


「そうしようか」


 唇での接吻キスよりも先に眼鏡のフレームで接触キスをしてしまった僕らは人生初のコンタクトをつくる事に決めた。

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