あの日の夜空@星と想い出はいつもそこに

「星を見に行かないか?」


 あの日、彼はそう言って私を連れ出した。


 両親の不仲による家族間での確執と受験に伴う緊張から来る重圧…

 あの頃の私は家族とも友人ともいなかった。

 そんな時に中学へ入ってからずっと疎遠になっていた隣の家に住む幼馴染みから突然、星を見に行こうと誘われた。

 時刻は午前零時過ぎ。

 窓越しに呼び掛けられたその誘いに戸惑ったが、私は誘いに乗った。


「ほら、乗れよ」


 両親に気づかれないよう、音を立てずに窓を開けた私に彼は私用として用意したサンダルを渡し、自転車のに乗るように促した。

 それから彼は少し肌寒い初秋の夜道に自転車を、高台にある公園まで私を連れていった。


「………」


 星は美しかった。

 言葉こえを失うほどに美しかった。

 久しぶりに見上げた夜空には昔と変わらない星が煌めいていた。


「なっ、綺麗だろ?」


 彼は当たり前の様に「」と言って笑った。


 想い出はいつまでも私の心の中に…

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