す…@臆病になるほどの想い

 ごめん…


 その一言がこの世で一番こわい。

 是か否か、大人はいつも結論こたえを曖昧にするけど、に関しては大人だって昔は二つに一つだった筈だ。


「ねえ、何で黙ってるの?君から架けてきたんだよ」


「あ、うん。えっと…」


「用件は端的且つ的確に。いつも言ってるっしょ。で、なに?」


「わかってる。でも…」


「デモもストライキもない」


「古いな。でもそうか、そうだよな。さっさとしないとな。俺さ、君がす……」


「す?」


「す…やっぱなんでもない!また明日学校で!」


 そう言って俺は電話を切った。

 心を決めて架けた筈なのにたった一言が言えない。


 だと伝えられない…


 言えば終わる。伝えたら二人はきっと今までの関係ではなくなる。

 友達から恋人になるか、恋人になれずに友達に戻れなくなるか…

 勿論、友達のままでいられる可能性もある。

 でも、俺にとってこれはそんなじゃない。


 伝えるのが怖くなる程の真剣ほんきの恋を前にして俺は臆病になっていた。

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