その日まで…@きっと彼は迎えに来る

 あの日から一年が経った。

 この一年は過去のどの一年よりも長かった。

 きっと何年経ってもこの残酷なほどに長い時の流れは変わらないだろう。


『ちょっと米国アメリカ行ってくる!』


 彼はまるで近所へ散歩に行く様な口振りでそう言った。

 一度は米国アメリカという曖昧な理由で単身渡米し、そのたった一週間の滞在期間中に彼は死んだ。

 ひったくりの場に居合わせた彼が犯人の逃亡を阻もうとして揉み合いとなり胸を刺されたらしい。

 その死に方を、彼の家族や友人は口を揃えて「彼」と言ったが、いつも喧嘩ばかりしていたバンド仲間の三人だけは「バカ野郎」と言った。

 私は何も言えなかった。

 彼の死を受けられなかった。

 あり得ないと知りながらも、ある日急に「ただいま」と言って彼がドアを開ける様な気がしていた。


 彼はもう帰らない…


 でも、あと何十年かすればきっと彼は迎えに来る。

 そして、「お前、老けたなあ」なんて笑うのだろう。

 その日まで私は生きる。

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