関係の結末@弁当箱の中に…

「先、風呂入るね」


「ん。出たらご飯ね」


 八年目に突入した同棲生活がそうさせているのか、それとも私に飽きているのか、最近の彼はどこかよそよそしい気がする。

 別にそれが不満なわけではない。

 大学卒業後に就職した会社で互いに新入社員だった彼と付き合い始めたのは入社から僅か一ヶ月程だった。そして、入社の二年後に私が会社をやめてネット通販の会社を立ち上げた事を機にこの同棲生活が始まった。

 つまり、付き合い始めてからは十年目だ。

 私達の関係のは早かったが、はまだ決まっていない。


「……はあっ!!?」


 空のはずの弁当箱を開けた私は思わず大声を出していた。彼のよそよそしさの原因がそこにあった。

 弁当箱の中には指環と共に『俺と結婚してください。出た時にこれを着けていたらイエスです』という手紙が入っていた。


「…ったく、こういうのはちゃんと言葉で伝えろよ意気地いくじ無し……」


 私は文句を言いつつその指環を左の薬指に着けた。

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