「…暇だ。暇過ぎる。

　いや待て、暇過ぎるってなんだ？

　世の中に於いて過ぎる事なんて滅多にないだろうが。

　凄過ぎるだの美人過ぎるだのと、現代人はなぜか過ぎるという単語（ワード）が好きだ。

　過ぎたるは及ばざるが如し…

　現代人は恐らく誰一人としてこの諺（ことわざ）を知らないのだろう。

　ん？諺？

　ことわざって、もしや言業か？

　言（こと）葉の業（わざ）と書いて言業（ことわざ）…

　それがいつしか言偏に彦と書いて諺となった、のか？

　…これは言い得て妙だ。

　暇を過ぎてしまった凡人（オレ）が思わぬ発見をした様だ」

　ドン！ドン！

「…少し静かにしてもらえませんか？」

「！！！あ…はい！すみません！」

　どうやらオレは知らぬ間に考えを言葉（くち）にしていたらしい…

「やれやれ…

　とんだ壁ドンを体験してしまった。

　少女漫画の壁ドンなら男がするべきなのだがな…

　まさか本来の意味の壁ドンを女性（お隣さん）にされてしまうとは…」

　ドン！ドン！ドン！

「終（しま）いには怒りますよ？」

「ごめんなさい！」

　こうして、暇過ぎる凡人の夜は更けてゆく…

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