同じ空の下@旅立ち

 二人は一言も言葉を発することはなく淡々と出立の準備をしていた。

 大学時代に知り合った二人は就職先が近かったという理由でルームシェアを始めた。

 様々な問題から男女のルームシェアは長続きすることはないと周囲から聞かされていたが、二人はこの日までの四年間、互いを尊重し、時に叱咤し、時に激励しながら生活を共にしてきた。

 しかし、その生活の幕は突然下ろされた。

 三ヶ月前、男の母親が急病で倒れ、退院日に合わせて男は介護の為に実家へと戻ることになり、女は一人では広すぎるという理由で部屋を出ることを決めた。

 男が家賃を前納した為に女はまだ数ヵ月は暮らせたが、女は違約金を納め、前納した家賃を男へ返した。

 そして、互いが知人に頼んだ車へ荷物を積み終えた時…


「今までありがとう」


「どういたしまして。元気でな」


「ん。お母さん、善くなるといいね」


「ありがとう」


 互いにと言い合った二人は同じ空の下、異なる地へと旅立った。

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