日常と非日常の狭間@行き先は…
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ…
トッ、トッ、トッ、トッ…
足並みを揃える様に音を奏でながら歩く二人の足音だけが響いている。
既に陽が半分以上沈み、昼と夜が混じり合った世界は道端の木々ですら得体の知れぬ怪物に思えるほどに不気味だった。
「もうすぐそこだからここで…」
女は交差点で行き先を指差しながらそう言った。
「最後まで送るよ。すぐそこなら尚更行くべきだろう」
男はそう答えた。
「でも…」
女は自分の行き先を男に知られてはいけないことを知っていた。
女は自分がどこに帰るのか、男がそれを知ってしまえばもう二度と二人は会えないことがわかっていた。
だが、それでも男はその道を歩んだ。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ…
「…ここかい?」
男の声に女はもう何も答えなかった。
「さようなら…」
男はそう言って手にした花束を地面に置き、そっと手を合わせた。
花束が添えられた地面の傍にあるガードレールには、生々しい事故の痕跡が残されていた。
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