過去からの手紙@未来からの返信

『あなたはいま、なにをしていますか?』


 それにはたった一行の言葉しか書かれていなかった。

 元々は少し高いクッキーが入っていた筈の空き缶の中から出てきたその紙は、単なるノートの切れ端をにした物だった。


『なにをしていますか?』


 それがどんな意味を持つ質問なのか、どんな想いが込められているのか、私にはわからなかった。

 私は今日、実家から持ち帰った段ボール箱の中からその紙を見つけた。


 書かれた日付は十六年前の六月十四日。

 十六年前の明後日だった。

 明後日は私の誕生日だ。

 私は今年で二十六歳になる。


『あなたはいま、なにをしていますか?』


 飾り気のない紙に書かれたその言葉、そのメッセージは十六年前の十歳の私が書いた未来へのだと思った。


「私はいま、幸せです。っと」


 そう呟きながら、私は過去の私が書いたその手紙の端にそっと書き加えた。

 私はいま、明後日の結婚式当日へ向けて最愛の人と共に最後の準備をしている。

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