一冊の希少本、二人の読者@読書友達

「あっ…」


「あっ…」


 馴染みの古書店でを見つけて取ろうとした時、同じ本を取ろうとした男性の手に触れた。


「!!…どうぞ」


 思わず譲っていた。


「え?でも君もこれを…」


「わ、私は別に良いですから」


 真っ直ぐに私を見ながら話し掛けてきた男性の視線に耐えられず、私は嘘をいた。


「………」


「ほ、本当に良いですから!じゃ、じゃあ…」


 微妙なに耐えられず、私は立ち去ろうとした。


「待って」


「!!…は、はい。な、なんですか?」


 男性に呼び止められ、思わず私は振り返っていた。


「この本、珍しいよね」


「…あ、はい。私も今日初めて見ました」


「だよね。だからさ…」


 男性は一瞬躊躇した様に見えたが、すぐにこう言った。


「もし良かったらもう一冊見つかるまでは二人で読まない?」


「えっ!?」


「俺、来週もまたに来るから。来週までは俺が読んで、次は君。その次はまた俺。…どうかな?やっぱ嫌かな?」


 私は、思わぬ読書友達を得た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る