少女と野良猫@公園のベンチ

「うっ…うっ…うっ…」


 公園のベンチで一人の少女が泣いていた。

 通行人は誰もその少女を気にかけることはしなかった。


「パパ……ママ……」


「にゃおん…」


 一匹の猫が少女に寄り添い、鳴いた。


「ううう……」


「にゃおん…」


「なんで私を残して死んじゃったの……ううう……」


 少女は事故で両親を亡くしていた。


「にゃおん…にゃおん…」


「……猫ちゃん?」


 少女はやっと猫の存在に気がついた。


「にゃおん…」


 ペロペロ…


 猫は下を向いて泣く少女が自らの手の甲に落とした涙をなめた。


「猫ちゃん…」


 少女は尚も涙を流しながら猫を抱き上げた。


 ペロペロ…

 ペロペロ…

 ペロペロ…


「にゃおん…」


 猫は少女の頬を伝う涙を拭うように頬を何度もなめて鳴いた。


「ありがとう猫ちゃん…そうだよね…悲しくても泣いてばかりじゃだめだよね……」


「にゃおん…」


 猫は少女の言葉に答えるように鳴いた。


 通行人は相変わらず少女のことを気にかけることはしなかった。

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