あなたが落としたものは…@変なヒト

「あっ!」


「え?」


 突然の声に私は振り向いた。

 するとそこにはほんの数秒前にすれ違った男性が胸を押さえてうずくまっていた。


「…どうしました!大丈夫ですか!」


 病気か何かと思った私は駆け寄って声をかけた。


「お、落とした…」


「落とした?何をですか!」


「こい…」


「こい?こいって何のことですか!?」


 私は言葉の意味がわからず、男性に問い掛けた。

 すると男性は立ち上がってこう言った。


「あなたは僕を恋に落とした」


「は?」


(え?何言ってんのこの人…)


「あなたに惚れました。連絡先を教えてもらえませんか?」


「………」


 私はこのを無視して立ち去ろうとした。


「あ、待ってください。落としましたよ」


「え?あ…」


 私のパスケースだった。


「ありがとうございます。てっきりナンパかと思って…」


「さっき言ったのはですよ」


 やっぱり、本当に古風なナンパだったらしい。

 しかし、改めて言われた私はなぜか悪い気はしなかった。

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