あの日のチケット@デートに誘ったつもり

 夏期講習、職業体験、宿題…

 俺の中学最後の夏休みは遊ぶ時間ひまがなかった。


 そんなある日…


「ほい。女子誘って行ってきな」


 そう言って姉がくれたのは近所のレジャー施設型プールの無料券チケットだった。

 一枚につき二人。

 無料券チケットは一枚。


「ちなみにそれだから、男誘うなら返せな」


 


 姉の一言に俺は緊張した。

 しかしすぐに心を決めた。


「ちょっと行ってくる!」


「おー、頑張れ若人わこうど


 俺ははす向かいの家の呼び鈴チャイムを鳴らした。


「はい…何だアンタか。なに?」


「あ、あのさ…その…」


「だからなに?勉強中なんだけど」


「こ、これ!」


「プールの無料券?これがなに?」


「あの…これ二人まで使えるから……良かったら一緒に行かないか!」


「!!!」


「嫌なら良いんだけど…」


「い、行くわよ!あ、ごめん大声出して。いつ行く?私はいつでも…」


 中学最後の夏休み、俺は好きな子を人生初のデートに誘った。

 彼女がこれをデートだと思っているかはわからないが…

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