第353話-1 彼女は帝国に向かうメンバーを公表する
帝国に向かうメンバー、今回は既にネデル軍に吸血鬼狩りの冒険者として合流する事を考えているので、経験を積ませることを踏まえメンバーを入替える事にして、早めにそれを伝える事とした。
「やった、俺、メンバー外れた!!」
「期待されないおじさんセバス」
「見た目は少年、中身はおじさん、能力は少年のセバスおじさん乙です」
思っていても口に出してはいけません。
前衛が青目蒼髪・赤目蒼髪を外して狼人と茶目栗毛を入れる事に、外された二人が不満を口にするが、メンバーを選んだ理由をここで彼女が改めて説明することになる。
「今回は、冒険者として私も参加します」
「「「あー」」」
全員納得であるが、説明は再度加わる。
「ネデル軍……反乱軍に参加するわけですが、今回恐らく、オラン公の近衛の周辺に配置される事になります。その場合、年齢的に高めで、尚且つ遠距離での攻撃技術のあるメンバーを中心に編成しています」
「でも、狼おじさんは?」
「盾役です。他の傭兵に絡まれた時、前に出て貰ったり、あとは部隊としては表向きの隊長を務めてもらうつもりです」
如何にもベテラン戦士である狼人は、『傭兵隊長』という趣である。更に、主兵力を『魔装銃』兵である薬師娘二人にすることで「若いのは新装備を使う教育を受けたため」という事で周囲の納得を得たいと考えている。
茶目栗毛を加えたのは、騎士・兵士としての教育、貴族の従者としての教育を受けている事にもある。
「私と守備隊長の補佐役として表に出て貰います」
「それは、セバスおじさんには荷が重い」
「ですね」
「……人間の常識に疎いからな俺は……」
おじさんの歩人でそれは通じません。とは言え、茶目栗毛は暗殺者の育成施設で、この辺りの教育を一通り受けており、祖母の助手としても優秀であると評価されているので、恐らく問題はないだろう。
「ネデルですね……もしかしたら、古巣のメンバーとどこかで遭遇するかもませんね。注意します」
「……お願いね」
茶目栗毛のいた暗殺者養成施設はネデル南部・デンヌの森のどこかにある外部から途絶された小さな町のような施設だという。帝国の影響下もしくは神国の影響下にあると考えられ、オラン公の暗殺を戦場で試みるかもしれない。この点は、必要な時点でオラン公にも伝える事になるだろう。
「今回は、私も参加ですね」
「ええ、期待しているわ」
薬師娘の片割れ、灰目藍髪が今回参加となる。銃兵を二人、前衛の戦士一人、中衛の斥候職兼弓兵二人、そして彼女の計六名が第二回帝国派遣チームとなる。
赤毛娘と黒目黒髪他数名は今回も居残りで、二期生の育成に務めてもらう。
実のところ、灰目藍髪は帝国から戻った彼女に次回の遠征に『志願』を受けていた。元より連れて行くつもりであったのだが、本人の意図を確認する為に、少し話をした。
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今残る薬師コース一期生出身の二人に、彼女はある役割を考えていた。
遠征に二人とも参加させる理由もその中にある。残るリリアルメンバーのうち、一期生の魔力小組女子三人と藍目水髪に今の薬師コースと二期生の初期教育を任せる予定であるのが一つ。
既に、三年魔力小組は薬師コースの子達とポーション作りを始めとする学院内の活動を主にしてきている。薬師コースは半年なので、既に六期目なのだが、それだけ学ぶこと、覚える作業が確立しているし、四人は十分に教えることができるレベルに達している。
魔力小組三人に、それぞれ薬師コース二名、二期生三四名を加えて班編成させる。このメンバーでローテーションで学院の午後の仕事を分担し行うようにする予定だ。指導員となる一期生は十三ないし十四歳となり、学院を始めた当初の彼女の年齢に達している。
薬師コースの孤児院出身者と同じ年齢であり、経験も知識も上であり、二期生より三歳程度年上である。十分に、教え教わる関係が築ける年齢差だと彼女は考えている。
三期生以降もこの形を続ける事で、一期生以下の魔術師を学院の教育業務から他の仕事に向かわせることができると同時に、先輩後輩の関係を形成し、それが学院の紐帯を強くすることも狙っている。所謂『師弟関係』を作る事で。
薬師コースの者たちにあって、魔術師コースの者にない孤児院の経験の一つとして、孤児院の年下の子達の面倒を見る運営側に立つ視点の経験があげられるだろう。
孤児院において、シスターが全てを為すわけではなく、孤児院の子供たちの面倒は、年上の孤児たちが率先して行う事が求められる。これは、一二年後孤児院を出て外で働く為の経験を積む機会でもある。上司であるシスターの指示を聞き、その内容を行ったり、年下の孤児の面倒を大人の代わりに見る事で、学びの経験をするのである。
薬師コースは卒院前の十四歳が対象であり、この経験を積んでいるのだが、魔術師コースは魔力の伸長を考えて十歳前後で学院に入れる為、精々自分の事が自分でできるという段階と、多少の手伝いを経験する程度である。
大人になる直前の一年はとても大きな差であり、それが三年ともなると大人と子供の差につながる。
実際、薬師コース一期生の中で優秀であった二人、碧目金髪の『カエラ』と灰目藍髪の『マリス』は彼女と伯姪より年上であり、実際、学院運営の為にとても影響があった。
一期生の薬師としての作業の指導や、薬草畑の管理、使用人コースの孤児や王都内の孤児院との連絡役など、彼女や祖母である院長代理の代わりに様々な業務を担ってもらった。
碧目金髪は、そのコミュニケーション能力の高さと明るさで一期生の子達をフォローしてくれていた。魔術師見習達の拙い言葉でうまく伝えられないことを補い、彼女や伯姪にそれとなく教えてくれていた。
カウンセラーのような立場で、彼女が立場上難しいような部分を見てくれたという面を大いに評価している。
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