第351話-2 彼女は帝国行の計画を進める
二回目の帝国行。今回はメンバーを変える事にする。一つは、経験を平均化したいのと、今一つは「狼人」を連れて行きたいからである。
青目蒼髪を残す関係で、赤目蒼髪も残る事になる。その代わりに、「狼人」を連れて行き、歩人と入れ替えで茶目栗毛を入れる。薬師娘は二人とも連れて行くので、灰目蒼髪も同行する。
赤目銀髪と碧目金髪、茶目栗毛と灰目蒼髪がタンデムで組み、「狼人」を一人で前に出す編成だろうか。
「……帝国に行くのは嬉しくないわけではないのだがな。一人で前か」
「ええ。あなたの活躍に期待しているわ」
「そうか。期待してもらって構わんぞ。ワハハハハ!!」
狼人、最近は暇であったらしい。連れてきた達磨人狼とお話するくらいしか、楽しみがないとも言う。
「人化した姿で傭兵らしく……か」
「装備は、工房で直接依頼してちょうだい。二週間くらいを目安にね。それと、剣の好みはあるでしょうけれど、統一の物を装備してもらうわ。同じ部隊だと認識されないと、困るでしょう」
「承知した。では、私が隊長と言う事でよろしいか」
「……ええ。皆をよろしくね」
「承知した!!」
この場合、彼女が離れた際の指揮官は茶目栗毛になる。本人が「隊長」と言い張るのはかまわない。最もそれらしいのが狼人だからである。
院長室で雑多な書類仕事をしていると、ノックの音が聞こえる。彼女は入室の許可を与えると、赤毛娘と黒目黒髪が入って来た。
「こ、こんど新しく入れ替えで帝国に連れて行くメンバーに、あたしたちも入れてください!!!」
「……私は行かなくてもかまわないんですけれど……」
「駄目だよそんな弱気じゃ! 置いてかれちゃうじゃない!!」
赤毛娘、未だ最年少十歳である。どう見ても子供。
「今回は、無理ね」
「なんでですかぁ!! 今までだって先頭に立って役に立ってたじゃないですか!!」
「……私はそうでもないんですけれど……」
つまり、自分の頑張りが正当に評価されていない……と言う事に対する反発なのだろう。ここで彼女は考えた。
「あなたを、守備隊長がいない間の、守備隊長代理に任命します」
「……守備隊長……代理……」
「ええ。今回の遠征は、オラン公爵軍の観戦武官としての役割があるの。あなた達を戦場に連れて行くのはまだ早いと思うの」
帝国遠征の話が、いつの間にか戦争に行く話に切り替わっていることを知り、黒目黒髪の顔が硬直する。赤毛娘は「隊長代理」のパワーワードに気が逸れているようで、今一つ理解していないようだ。
「……それは無理ですね私たち……」
「頑張ります!! リリアルの守備は任せておいてください!!」
ということで、二人は別々の理由で納得したのである。
帝国遠征メンバーの入れ替えの件は、その日のうちに一期生全員の前で説明する事にした。二回目の選から外れた蒼髪ペアには、伯姪のサポートをお願いする事になる。薬師娘二人が抜けるので、黒目黒髪の負担が増える事も説明し、一期生の魔力小の三人がサポートを今まで以上に務める事をお願いする。
「今回参加できなかったメンバーも、順次帝国に行く事になるわ」
「……戦場怖い……」
「ミアンの時と違って、野戦だもんね……」
「だ、大丈夫だよ。先生の傍を離れなければ!!」
碧目赤毛『ルース』、灰目赤毛『カルメ』、碧目栗毛『シャンテ』の声が聞こえる。見た目が幼い三人なので、一二年後になるだろうか。その頃には二期生もある程度、自立して活動できると予想されるので、魔力小組も帝国遠征に参加できるだろう。
「完全傭兵に擬態する」
「……無理があるよね……女の子たち」
赤目銀髪の言葉に、茶目栗毛が答える。とは言え、内戦では女性も銃や槍を取り参加する事がないわけではないのだが、小柄な女子たちが騎士の姿をするのは、明らかに狙われるような気がする。
「騎士らしくない銃兵の装備で参加した方がよさそう」
誰かが声に出し、彼女もふと考える。騎乗の者でも軽騎兵に相当する者たちは、重たい鎧を着ていない。ほぼ、銃兵に似た装備で、手綱を握る腕の防御や、太腿前垂れの革のカバー程度の違いでしかない。
そもそも、傭兵は完全武装の騎士のような姿はしないので、問題ないのではないかとも思う。実際にネデルでの戦場を確認してから、彼女たちの装備は見直そうと考える。
「で、いつごろ向かう事になるの?」
伯姪の問いに彼女は「二月以内だと思うわ」と伝える。宮中伯との取り決めが成立し、こちらの準備が整うのが一月位先であろうか。
「では、魔装侍女さん達の教育と並行して準備を進めるのね」
「ええ。ただ、オラン公と宮中伯の話し合いがどうなるかで少し変わると思うの。今の段階では暫定的な結論だわ」
彼女自身にも確実なことは何も言えない。予定は未定……というよりもある程度先のことは分からないのである。
一期生の中で、帝国行となったメンバーが、既に経験した青目蒼髪や赤目蒼髪に話を聞いている。勿論そこには、選ばれていないのだが今後参加すると言われている者たちも参加している。
赤毛娘と黒目黒髪は、リリアルの守備計画を二人で整理していた。
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