第115話-1 彼女は騎士隊長と物件を確認する
「いやー お姉ちゃん、プレゼント貰えるとは思ってなかったよ~♡」
「姉さん、分かっているでしょうけれど」
「大丈夫大丈夫。魔装衣も身に着けているし、この短剣も身につけておくよ。いざとなったら、この胸当てもつけるから。そうなる前に、断罪して仕事を終わらせたいんだよねー」
情報収集に証拠集め。あと二週間くらいはかかるだろうか。少しずつ真綿で首を締めるように行動しているものの、反応は鈍く、自分たちが王国から訴追される立場にあると認識していないようだと姉は言う。
「明日は騎士隊長さんと、駐屯地の候補地に行ってくるわ」
「商会の事もよろしくアピールしてね」
ウインクする姉がうざい。
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翌日、騎士隊長とお供の騎士たち、それに彼女と伯姪、茶目栗毛と青目蒼髪、赤毛娘は赤目銀髪の馬にタンデムで乗り、全員馬での移動となる。彼女の魔法袋の性能からすると、馬車で移動する必要性より、移動速度をとる形になった。天気も問題なさそうであるし。
騎士の中には、子供ばかりの集団に驚く者もいたが、人攫い村での容赦ない討伐を見知っている者からは畏敬の念を持たれているように思えた。
最初に向かったのは、例のアンデッドのいた廃村。作業用の小屋代わりに利用できるかどうかの確認だった。井戸や馬小屋などの備品も問題なく、「これは工事がはかどるな。即着工でもいけそうだ」とお墨付きをもらう。
「ここから西に移動した少し高くなっている場所ですね」
川と村の中間であるその場所を案内する。丘まではいかないが少し周りより高くなっており、川がギリギリ見えるような場所だ。
「街道から離れていても、川から運河で持ち込めれば問題ないし、むしろその方が何かと便利だな」
「そう思います。王都と船で一日の距離、尚且つ、水運も遣えれば補給廠としても機能できるでしょう」
「連合王国の侵攻があった場合も、ルーンで反乱が起こった場合でも悪くない立地だ。俺から騎士団と宰相には意見具申しておく」
恐らくは、騎士団の駐屯地建設担当と、財務関係の人間が立ち入り、具体的な予算化を行うことになるのだろう。
「それまで、そこの廃村を仮駐屯地にするかな。広さ的にも十分だし、簡易な防御施設もあった方が良いだろう。それは騎士団単独の裁量で実行できるしな」
簡易な拠点であれば、騎士団の通常業務の範囲内の為、今回のような治安維持活動の延長線上において騎士隊長の判断で行動できるのだという。
後続の部隊も到着しており、この拠点を守る守備隊・ルーン周辺の警邏を行う隊、ベルモントを拠点にアヴェルとの街道を哨戒する隊でローテを行うことになるのだという。
「王都から直接補給をしてもらうのは安定しないし、ルーンの商会に関しては情報漏洩の可能性も考えるから、ニース商会を噛ませて補給廠を管理させるってのがお互いの利益になるだろう」
「姉からもよろしく伝えてほしいと申し受けておりますので。その線でお願いいたしますわ」
「任せておけよ。まあ、あんたらが身内でいる方が安心だしな」
騎士団とニース商会は王国・王家・王都を守ることに共通の価値を見出しているので、そういう意味では信用できるのだ。利害が一致しているから安心できる。
早速、配下の騎士たちに指示を出し簡易な縄張りを行うことにしたようで、騎士団とはここで別れる事になりそうだ。
「また、具体的になったら今度はあの綺麗な姉ちゃんと一緒に話を聞いてもらうことになるか」
「その際は、橋向の新興地区でお話ししましょう。城塞内は不安ですので」
「承知した。その辺りも宮中伯辺りに打診してみよう」
宮中伯は「情報総監」の立場を持っているため、拠点を設けるのに新興地区が適切だと騎士団から申し伝えるつもりだというのだ。
「連合王国兵が入り込んで事件を起こしてるから、ルーンの有力者どもも何も反論できないから丁度いいんだ。あの中は色々面倒だし、衛兵も門の外は関係ないみたいだからな。騎士団のルーン周辺の駐屯地に加えてもいいんだ」
城塞の中ではなく、新興地区に駐屯地を設けるのは橋の反対側を守備するうえでも、またルーン市内での工作活動を防ぐ上でも有効だろう。
「またしばらく、世話になりそうだがな」
「ふふ、リリアルと騎士団は協力関係にありますから。いつでもお声がけください」
ではではとばかりに手を振り、リリアルメンバーは街道に戻ると、ガイア城に馬首を向けるのであった。
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