Syber-Fantasy:第10話
「ギャルソン!おい!ギャルソン!」
かつてチャロとよく来たこのお店は、控え目な
あの頃に引き戻されるような空気の
まるでこの場に
「ちょっと、なんなんです?いきなり大声をだして!」
あたしが
「お呼びでしょうか?」
整髪料で整えた髪を
「とりあえず熱くて濃ゆい珈琲をくれ!」
警察は
「さあ、次はお姉さんの番だ。注文をしなさい」とでも云うかのような顔であたしの顔をじっと見る。
「あの、普通は同席の人にも注文が決まったか確かめてから注文するものですよ?
それに、注文だけなら店員さんを呼び立てるんじゃなくテーブルに
警察の非常識な振る舞いにあたしは気を悪くし、
今度は店員の方に向き直り軽く頭を下げて申し訳なさそうな顔を作りながら
「ごめんなさい。
とお
店員はにっこりと微笑み、あたしに話し始める。
「そんな
そもそも私はお客様との会話を楽しんだり仲良くなりたくて喫茶店を始めたんです。
それが、エントランスシステムだのオーダーシステムだのの導入で
まるでお客様と触れ合うチャンスもなく、
お客様にギャルソンとかバリスタとかって呼ばれたくてこの
なので、今のようにお客様に気軽にお声を掛けていただくのはとても
どうかお気になさらないでください。
お連れ様は不馴れなのではなく、私が思い
きっと
店員がここまで話すと警察は
次の瞬間、耳に入れていた携帯端末を押さえ突然会話を始めた。
「あぁ、ワタシだ。異常はないか?決行は2530時だ。
ワタシは間に合わんかもしれないから
しくじりようのない仕事だ、しっかりやれよ。
それまでは見張りを一人残して
いいな、こんな簡単な仕事でしくじるなよ」
あたしは
店員は耳を
「聞いていません」と
「ちょっと、今のはどうです?
端末に通信が入ったなら応答していいか伺いを立ててから出ませんか?
ましてや今あたし達は会話の真っ
さすがに今のはマナー違反ですよね?」
あたしが同意を求めて店員に
店員も
「ここは確かに
この場所でお客様がそれぞれ思い思いに自由に
私供は喫茶店
苦し
「お客様はアイス・ミルク・ティーの氷を少なめでよろしかったでしょうか?」
初めてチャロとこの店に来た日、あたしはアイス・ミルク・ティーを注文した。
チャロとの会話はいつも通り
どんだけ
あたしは半分も飲まずに溶けた氷で薄まったミルク・ティーを残してしまったのだ。
二度目にこの店に来た時は、そのコトを思い出して注文したミルク・ティーが来るや
こっそりと氷を取り出して灰皿に移したのを今思い出した。
氷を取り出して
全く気付かなかったが、三度目以降は氷が少なめになっていたのだろう。
あたしはこの店員の顔すら覚えていないと云うのに
彼は何年も来ていなかったお客のコトをよく覚えていたものだ。
三度目の来店以降、氷を少なめにしてくれていたと云う
そのコトをこの店員が覚えていたコトとにあたしは感動して言葉を
「あ、申し訳ありません。過去のオーダー履歴にそう
店員は何か取り
エントランスを通っただけでは履歴までは見れない筈だし
氷を少なめ等と云うような補足の
「スキャンもせずに、そこまで分かるんですか?」
絶対におかしいと云う
店員は更に慌てたような顔を見せたが、すぐに
「お久しぶりです。お客様のコトはよく覚えております。
あの頃のお連れ様はその
お客様がいらっしゃらなくなって寂しく思っておりました。
そうだ!昨日もお見えになってましたよ。
突然ちょっと雰囲気が変わっておられたので覚えております」
あたしが会社を辞めた後もチャロがこのお店に通っていたと云うのは
バイトの仔の云う通り、あたしの様子を伺いに来る為に様相を変えたのであれば、あたしとよく来たこのお店に昨日来たと云うのも
彼女の
「つかぬことをお伺いしますが、髪の色は何色でしたか?」
あたしが店員に質問すると警察が
「やはり、ここはお姉さんの恋人との思い出の場所だったのかね?」
「女性です!
会話の腰を折られて
そしてチャロの髪の色の返事を聞こうと店員に目をやると、店員は警察の方に向き直り
「失礼いたしました。
珍しくお客様と会話ができたもので、つい調子に乗って話過ぎてしまいました。
どうぞ、ごゆっくりとお寛ろぎくださいませ」
と云い
店員の
「ギャルソンさん、いつものをお願いします」
と微笑みながらあたしは改めて注文を告げる。
店員はにっこりと微笑みを返してから
「かしこまりました。
と、またお辞儀をしてあたし達の席を離れて行った。
「さて・・・」
店員があたし達の席を去ると警察は似合わないはにかみ顔で話し始める。
「まず最初に、お願いと云うか、提案なんだが・・・」
なにやら云い辛そうに話しを切り出してきた警察にあたしは相槌を打つでもなく続きを待つ。
「差し支えなければ、私もお姉さんの事をママと呼んでも構わないかね?」
「あたしは
警察は更に照れ臭そうな顔をしながら
「別に問題ないだろう。
政府が義務付けているのはIDの使用と、親から
親しい仲で、ID番号の
まさかお姉さんの本名がママな筈もなかろうし、問題ないだろう」
と自分の申し出を正当化する。
「
今の店に勤め始める時に店主が付けた呼び名なんです」
照れ臭そうに警察が切り出した提案に
「マスターか。面白い男だのう。
私は
お互いに自己紹介のような事ができればいいのだが・・・」
なるほど、この警察の目的はマスターに関する情報な訳だ。
あたしはてっきり連飛を匿った事であたしが責められるのかと思った。
マスターは麻薬を販売してはいるが、どれも政府からの正式な許可を得ているし
そんなめんどくさい申請手続きをきっちりと踏んできたマスターが
何かの
「マスターはね、子供みたいに
あたしは自分の話をするのが苦手で、無意識に自己紹介から話題を
「その様だね。だから余計に分からんのだよ、真実が。
まぁいい。あの男の話は今は止めにしようではないか。」
「さっき云っていた取調室ってのもマスターの件かしら?
別に、今ここで何を聞かれてもかまいませんが・・・」
あたしはしつこいかなと思いつつも更にマスターの話題を引っ張ってみる。
「あぁ、取調室か。さっきはお姉さん・・・いやママを引き留めたくて
余計なことまで口走ってしまったな、まったく」
警察は椅子に深く座り直して真直ぐにあたしの顔を見ながら話し始める。
「正直、まだ
今追っている一件にママがどの様に絡んでいるのかによるな。
つまり、ママが何も知らないのであるなら
ママが何かを知っていたり、ましてや何らかの
あたしには警察のご
のみならず、マスターが何かしらの犯罪を犯していたり
関与しているとも思えないので、あたしは安心をした。
店に匿った連飛のことで咎められるのであればこんな云い方はしないだろうし
警察が一体何をどの様に勘違いしているのか、逆に聞いてみたいくらいだ。
「ママは警察に対して、どのような印象を
なんだこの
「あたしは
特にこれと云って印象も抱いてはいませんが、
さっき店に一緒にいた警備員に警察は嫌な奴ばかりだと聞きましたので
彼がそう云うのであればそうなんだろうなと云う
冗談ですよ。申し訳ないくらい、なんの印象も持ってないです」
警察は軽く頷くような仕草を見せた後、またゆっくりと話し始める。
「まぁ、そんなトコだろうな。
その警備員の云う嫌な奴ばかりと云うのもあながち間違いでもない。
警察の私が云うのだから確かだ、嫌な奴ばかりだ。
さっき私と一緒にいた部下を見ただろう?
自分の利益や
彼は本部の副部長の
親が本部のお偉いさんの上、本人もあんな性格だから
どこの部署に配属されても上司と上手くやれなくってね
アイツの首根っこを抑え込めるのは私しかいない様で
一応、私の右腕と云うポジションに
実際はアイツの
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