交差
無意識に走っていた。昼間はあんなに暑いのに、夜になると肌寒いくらいだ。祭りの会場が見えてきて、足を緩める。荒い息を押し殺して平然を装う。
こんな生き方しかできない。きっと、会場のどこかに君がいて、友達と笑い合っている。見知らぬ男がいたなら身を打つ。盗み聞きなんて、我ながらタチが悪いなと思った。
花火のような君に、僕の手は届かない。だからせめて、妄想の中だけでも一緒にいさせてほしい。女々しいなんて言わないで……
***
人々は背景、『 』は孤独。真っ暗な世界で感傷に浸る。気持ちは想い人を探す。不意に周囲が明るくなる。遅れて胸に響く音が鳴る。儚く散るその花を、心象に重ねてみたり。
となりに居たらな――
***
妄想を追いかけていた。いつもはあんなに目を逸らしてしまうのに、今は動きたくもないくらいだ。また会場が暗くなって、それでも見つめる。幻ではないかと疑う。
偶然であるわけがない。そっと天に明かりが灯って、目を細める。その姿が胸を打つ。聞こえるような声で話すなんて、なかなか恥ずかしかった。
夜空のような君に、私の手は届かない。だからせめて、花火を一緒に見ていたい。偶然なんて言わないでね……
***
君と見る
空に咲く花(黒の画用紙)
綺麗だね
横顔覗き
交わる夜空(花火)
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