第135話
超巨大都市ゴモラン陥落から、さらに6ヶ月ほどが経過した。
ドーラを始めとする魔王たちは北へ北へと足を進め、快進撃を止めることなく、さらに2箇所存在した大都市のアサヒキタ、超巨大都市のフッツェカルバルもその規模に反して短時間で陥落。
どちらとも地平線の彼方まで続く都市群ではあったが、ドーラのドラゴンブレスの前にはなす術なく消し飛んだ。
進行にかかった時間の6ヶ月は戦いよりも移動時間の方が圧倒的に多いのはいつものことで、これまたいつものように戦闘時間自体は短いのだが、デカイ故に攻撃されやすいドーラは毎度のように銃弾や砲撃を浴びて、いったいと叫びながらドラゴンブレスで塗り絵のように街を綺麗に瓦礫へと塗り潰し、消し飛ばす。
ちくちく攻撃されて、時折強烈な大砲類の攻撃で毎度のように泣きそうになるまでがセットである。
取りこぼしや避難民は魔王のホムンクルスが仕留め、死骸はそのまま分裂のための餌、聖女見習い達の手によって人腕ナマコの死体ストックとして運び込まれることになる。
移動時間を除けば実に順調と言っていいだろう。
『まだ、やるのぉ?わたし、もう帰りたい。ちくちく、ちくちく痛いし、デカいのは鱗が剥がれるくらいに痛いし、いたいのはもうイヤぁ』
まあ、厳密には移動時間と帰りたがるドーラを宥めるのに時間を要したのだが。
当然ながら追い詰めれば追い詰めるほど、時間がかかればかかるほどに抵抗も激しくなるし、それに伴い被弾回数も増えていくのは致し方ないところである。
そのどれもが鱗を数枚剥がせるかどうか…人間で言うところのちょっとした擦り傷程度のダメージでしかないが、その頻度が増えていくのに比例してドーラの心のうちには着実にフラストレーションが溜まっていた。
端的に言えば彼女は特に帰りたい気持ちでいっぱいなのだ。
「あともう少しだから」
と言うしかない。
ドーラを抜いてしまうと、攻め手が一気に弱くなる。
今までの経験上、ここまで来てもなお最悪は敗走、なんてこともありえなくもない。
ちなみにカード召喚士である闇太郎はドーラを呼び出した段階でお役御免。一応、余剰戦力として一緒にいたのだが魔王のホムンクルスを創り出して、その戦果を確認したところで完全に必要ないと考え、すでに我が家であるダンジョンに向けて帰還中である。
ドーラ達の帰りは彼のカードによる召喚魔法でさっさと帰宅しようという魂胆なのだ。
これによって誰にも帰還先を辿られずに戻ることができる。
さらには退路を確保する必要もなくなり退路を確保をさせてた「彼女」も必要なさそうなので、闇太郎の護衛がてら一緒に帰還させていた。
もちろん2体とも帰還する先がバレて、実はプラベリアに?!とならないようにカード魔法を駆使して、隠れながら帰って貰っている。
そして。
快進撃を続けて更に半月、すなわち6ヶ月半くらいが経過しただろうか。
いよいよ辿り着いたのが、サドラン帝国の首都、サドランである。
道中に見かけた街は全て潰しながら、一直線に此処を目指した。
戦術の知識なんてない僕からすれば、国のお偉いさんが住むであろう首都を先に潰してしまえば、命令系統が乱れて今後がより楽になるに違いないという考えだ。
もちろん無視した周囲の街から戦力を出されて囲まれないように周囲の街には使い捨てにできる魔王のホムンクルスを放っている。
それも一つの街につき数百万単位で。
安易な戦力の分散は悪手である気がしないこともないが、魔王のホムンクルスは着々と数を増やして余裕で数十億を超える数に及んでいる彼らなら数百万くらいはさすがに大丈夫だろうという考えである。
今は懐かしき増殖して数で押す魔王ヨトウガでも一億はいってなかったため、分裂スキルの強力さが実によくわかる。
しかも道中の街を攻略していく際に、人間の死体のみならず、人が食べるはずであった食料、なんなら紙などの生物由来の繊維なども全て分裂のための栄養にしたためか予想を遥かに超える増殖具合だ。
なんなら控えめな増え方ではある。
なぜなら移動速度自体はそんなでもないので、次の街にたどり着く頃には大部分の人間が避難済みだったり、食料を元に増えるのがバレたのかある程度焼き払われてることが多かったためだ。
とはいえ、これだけの戦力があれば余裕を持って潰せるはずだ。
さらに言えば幸いにもと言うべきか、不幸にもと言うべきか、僕たちの目的は侵略や占拠ではなく「間引き」だ。
人間を殺すことそれ自体が目的なのだから、負けそうになったら逃げてしまえばいい。
いざ撤退する際は闇太郎の召喚で帰還するだけ。
そして、また改めて攻め潰す。
それをただ繰り返せばそれだけで目的は達せてしまう。
彼ら襲われてる側からすれば悪夢も良いところである。
ただ、一筋縄では行かないのもすでに理解している。
魔王蝶々による偵察で、首都サドランの現在の姿を確認したところ、さすが巨大兵器を発展させてきた国なだけはある。
僕たちの視線の先には今までとは比べ物にならないほどに巨大な山よりもでかい戦車が聳え立っていた。
その名を…
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