第130話
ドーラのドラゴンブレスは超巨大都市ゴモランの防壁に直撃した。
瞬間、轟音が鳴り響く。
凄まじい閃光を放ち、数秒してドラゴンブレスは8つ又に弾けて分かれ、周囲を焼き払うに留まった。
「うわ、初めてまともに防がれたかも…これは苦戦しそうだな」とはエルルの談。
ゴモランの防壁は中心部が融解し、何枚もの分厚い装甲を重ねた防壁がひしゃげて、斜めに傾いていた。
ところどころにヒビが入り、一部からは煙が上がっている。
周囲の地面は抉れ、吹き飛んだ土砂が周りに飛び散っている様子は満身創痍という言葉がふさわしい。
決して余裕があるわけではないし、同じ場所への再度の攻撃が来れば流石に保たないことは一目瞭然。
だが、超巨大都市ゴモランの防壁はドーラの一撃を確かに防いだのだ。
「ぐぬぅっ!?凄まじい揺れだったが…被害状況を報告しろ!!」
「IからK区画の防壁破損!直撃を受けたJ区画防壁は大破!防壁内部の障壁発生エンジンも大破しました!次は持ちません!!奴のドラゴンブレスの距離による威力低下は想定よりもかなり低い模様!」
「防壁の切り替えは!?」
「ダメです!操作できません!!…今、連絡が来ました!防壁が傾いているとのこと!斜めになっているせいか、可動連結部も破損しているようで、J区画防壁は動かせません!!I区画、K区画防壁も稼働はするものの、動きがかなり制限されてます!」
「やむを得ん!3つの防壁区画は捨てる!近くで布陣を敷いている奴らを別の場所に…」
「待ってくださいっ!再度高エネルギー反応を検知!!また来ます!あれだけの高威力攻撃が短いスパンで連発されるなんて…聞いてはいましたが、やっぱりヤバすぎです!!」
「ぬぁなぁにぃっ!?この距離を届かせるドラゴンブレスは今まで観測された以上のエネルギーが必要なはず…それでなお今までと変わらぬ連射性となれば…どちくしょうめ!!
もはや布陣の移動は間に合わん!この際、死ぬまでの僅かな時間で少しでも攻撃を喰らわせろっ!!死中に活を求めろっ!黒竜は捕捉出来たな!?」
「大丈夫です!
各所に設置されてる大砲に位置情報を送信しました!」
「よし!大砲によるターゲットは全て黒竜に変更!向かってくる巨大ナマコとは歩兵の携行火器や都市内部の戦車で迎え撃てっ!!少しでも時間を稼げよ!言うまでもなく、チャンスがあればブッ殺せっっ!!」
「通達完了!
すぐさま砲撃が開始され…うわぁっ!?」
しばらくして再度の揺れが起超巨大都市ゴモランの中央部にまで届く。
が、先程よりは遥かに少ない揺れである。
訝しむも一瞬。
「被害状況は!?」
ガルシア元帥は現状確認を急がせる。
「それが、損傷、極軽微です!信じられません!」
「詳細はまだか!?」
「…来ました!どうやら、ドラゴンブレスの2発目はJ区画防壁の上半分に当たってそのまま上空へと逸れた模様です!逸れる際に幾らかの高層建築物や大砲が倒壊しましたが、ドラゴンブレスの威力からすれば信じられないほどの軽微な損害です!」
「…何が起こった?」
「…どうやらJ区画のやぶれかぶれの大砲が黒竜頭部に直撃。黒竜は依然、健在のままで致命傷には程遠いようですが直撃したために狙いが逸れたのだと思われます」
「でかした!!その調子でひたすらに撃ちまくれ!」
ドーラの外殻は貧弱というわけではない。
が、そこまで強靭なものではない。
少なくとも砲弾による頭部への一撃による衝撃を殺しきれずに、気が遠のき、ふらつくくらいには。
しかも建築物に設置、固定するタイプの大砲は動かす必要がある戦車に搭載する大砲よりも大型化しやすく、ゆえに使われる砲弾もより巨大で貫通力、衝撃力共により強力なものである。
頭部へのクリーンヒットは見事にドーラの攻撃を逸らした結果、兵士の一部は命拾いしたのだ。
この土壇場でありながらも実に素晴らしきファインプレーである。
感動的とも言えた。
だが無意味だ。
なぜならば。
敵はドーラと人腕ナマコのみにあらず。
新たな魔王が都市に忍び寄っていた。
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