第81話

魔王達を集まる場所を作るにあたり。


まず考えたのは魔王クリエイターで家のように体を変形できる魔王を創ってみてはと考えた。


がしかし、あまりに生き物としての性質とかけ離れすぎているのか、スキルに要求される容量が多い上に、生きた家って住みづらそうだと思い、却下。

そもそもほぼ魔王達が倒された今だが、生き残った子供達のためにと作成していた聖女と聖女見習い達はかなり数が多い。

彼女達が過不足なく生活できるスペースとなるとかなり巨大な家が必要になるが、そんな巨大な物を作れる材料に現状、当ては無い。

さて、どうするかと頭を悩ませる。

クリエイターとは名がついても魔王クリエイターは家を作れるような力ではないため、聖女達に自分で作ってもらうかと考えるも、彼女達に付与したのは普通の建築スキルだ。

これからも魔王達が集合する集合住宅的な物を、いざ居場所がバレたときに攻め込まれても大丈夫な特殊な建築物を作れるかと言えば、作れはしないはず。


などと考えていたら気づいた。

そうだ、立派な住処を創れるような生物を魔王クリエイターで創り出せば良い。


気づけば早い。


後は住処を何処にするかだが、どうも魔王クリエイターで一から創り出した生物は僕に対して何かしらの情を抱いているような節がある。

会話をしたり、直接会ったりしたいようなのだ。

僕がやりたく無いことを押し付けているのだから、できる限りのことはしてやりたい。

そんなこと言いだしたら初めから自分でやるのが一番良いと心のどこかで思わないでも無いが、ほら。精神衛生上、直接殺して回るのは嫌だし、それが出来るのなら魔王クリエイターという力よりももっと直接的なやつにしてもらった。

さらには今まで死んでいった魔王達を見るに、魔王達とは比べ物にならない強化を施している僕もやられてしまうかもと思っちゃうわけで。

命と良心を天秤にかけたら、そら命だよね。

しかし、それならばせめて命に関わらないレベルで彼女達の望みを叶えてあげたいとは情ある人の思考回路としてら当然のこと。

僕に会えるとなると僕の近くに拠点を作ることになるわけだが、ちょっとそれは命を大切にしたい僕からすると遠慮したい。

しかし、いや、でも。

ううむ。

異形の人の死に様が思い起こされる。

何かしてやりたいという気持ちが膨れ上がる。

だが、しかしなぁ。

中途半端に情ある対応をするとそれが命取りになりそうな気が。

前世で見てきた漫画やアニメに登場する敵役もそうした中途半端な情が原因で死ぬというのを見たような記憶がある。

現実とフィクションは違うが、まるっきり当てはまらないかと言うと…

だが、まあ。

異形のヒトの死に様を見たり、改めて聖女達と魔王蝶々を介して話をしてみるとどうにかして、と思っちゃうわけで。

ただでさえ人類に罪悪感を抱いているのに創り出した魔王達にまで罪悪感がいっぱいになったら、見て見ぬ振りも厳しくなってくる。

強いられているからと言う免罪符片手に目を逸らし続けるのも大変なのだ。

彼らは敵では無い。

敵では無いのだ。

僕のやりたく無いことをやってくれる、良き仲間だ。

見ず知らずの人に罪悪感を抱かないようにしたいが、人類に対してどうしても罪悪感を抱いてしまう以上、せめて生み出した魔王達には罪悪感を抱かないように済ませたい。


よし。

いっそのこと敢えて近くに拠点を作るのもありだろう。

灯台下暗しとも言う。

こんな近くに全ての黒幕はおらんだろ?と誰もが思うはず。

と言うか黒幕を別に用意すれば近くに黒幕がいるかもと思われたとしても問題ない気がする。

そもそも拠点があるとバレるとも限らないし。

当然だが、あるとバレないように隠すとも。



「それじゃあよろしく頼むね?ダンちゃん」

「こくり」


新たに創り出した魔王の一体。

ダンちゃんと名付けた魔王が頷いた。

彼には皆が集まる住処を作って貰う。


名前 ダンジョンメイカー

個体名 ダンちゃん

生物強度 20

スキル ダンジョンメイキング ダンジョンクリエイト ダンジョンワープ 掘削 俊敏 可変型巨体


まず僕は魔王達に名前を与えることにした。

魔王ヨトウガだの、魔王ゾウムシだのとそれは名前というより種族名に感じたから。

彼らに対してちゃんと接すると決めた以上、ちゃんと彼らに報いるためにも、きっちりと一体一体に目を向けてやりたい。

その手始めが名前だ。


ダンちゃんと名付けた魔王は、魔王達の住処を作って貰うスペシャリスト。

さらに隠しやすく、いざバレて人間に攻め立てられた時に対応できるように家を作るとなると、それって最早ダンジョンじゃね?となって創り出した魔王である。

魔王という人類に敵対するモンスターが住み着き、隠しやすいとなると地下に作るのが一番かな?となり、バレた時に攻め込まれた際に迎え打てるように入り組ませたり、罠やらを設置する場所。

うん、どっからどう聞いてもダンジョンである。

そのダンジョンを作って貰うのがダンジョンメイカーと言う魔王。

元の生物はミミズであり、姿形もミミズを巨大化させただけ。

畑仕事でミミズを見慣れた今でも流石にここまで大きいと気持ち悪いかも。

しかし、僕の言葉に反応して頷く姿はコミカルで可愛らしい。

ちなみに元ネタがミミズってだけで、実際にいるミミズを魔王化したわけではない。

ゼロから創った方がスキル付与のための容量がより多いと言うことが分かっているので、わざわざ畑の益虫たるミミズを犠牲に弱い魔王を創り出すなんてことはやらない。

さらにもう一個体。

サドラン帝国にて生み出してある。

改めて魔王蝶々による情報収集をした結果、サドラン帝国は過去にドラゴンが沢山生息していた名残か、巨大兵器を得意とする国らしく、彼の国にはダンジョンメイカーが一番相性が良い。

もちろんただ送り込むのではなく、ちゃんと

ダンジョンに誘い込んで間引けるように作戦も伝えて送り出した。

くくく、今までのなあなあでやっていた僕とは一味も二味も違うのだよ。

今更ながら魔王達にもちゃんと感情があるんだなぁと気づいて、しっかりと実感してしまった以上、今までの半ば使い捨てにするようなやり方はしないのだ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る