0.1st.6

椅稲 滴

第1話

 ああ、書くか……しかしこれは、焦りだろうか……どうしよう……今思ってること?……深夜だからか……オールナイト……そんな言葉ばかり……そろそろいいかな?……よし、書けるな……さあ、今日は……あれ? もう0時20分?……はあ……今は、8月24日0時20分……小説内は8月24日6時10分くらいでいいか……もちろん、同じ年の……ふふ、わざとらしくわざとらしく……


 昨日書いた小説に倣って、母さんには6時に起こされたけど、10分まではいいと現実世界と無世界の間を行ったり来たりするつもりでいたら、母さんが2度目、起こしに来た。昨日自分で6時に起こしてもらうよう頼んだ手前もあって、起きなければならなかったと、そういう予定だ。電池の具合なのか故障なのか、今朝は鳴らない目覚まし時計。は、6時と2分を表示していた。

 二段ベッドの上には弟が寝ているから、いや寝ていなくてもカーテンは開けないが、母さんが一度目の時にすでに開けていたので、世界は大体真っ白だった。昨日僕が珍しく時間割を見て詰めた黒のリュックは、裏に、プラスチック製のイスの下に隠れていたから、おそらく黒のままだっただろう。確認はしていない。

 2階のリビングに上がって時計を見たら、6時10分だった。いくら僕で朝とはいえ、まさか階段を上がるだけで8分もかかるはずがない。ということは、目覚ましは壊れていたのだ。……でも、何のために? 小説にはそんなこと書かなかったけど……。ー「おはよう」「うん、おはよう」 いるはずの灰色のスーツ姿の男(もちろん僕の父さんだ)に挨拶を返して、今朝は納豆が出ていないことに気が付いた。スーツににおいがつくからかな? そうそう、昨日の小説では、父さん、コーヒーをこぼしたっけ……。あ、こぼした。ん? スーツ姿? こんな時間に? でも、小説にはそう書いてあった。コーヒーがかかった父さんは、シャワーを浴びに言った。

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