第9話
「しゃあない。歩くか・・・。タクシーはもったいないし・・・」
僕の家族?
僕には無関心です。
「待ちたまえ。尾張くん」
墓標の中から、先ほどのお父さんが現れた。
「娘が、世話になってるね」
「いえ、僕は何もしていませんが・・・」
「いや。法子は君に助けられてるよ」
会話したことないんだが・・・
「見ている人は、見ている。法子は君の事が好きみたいだ」
「いえ。失礼ながら実験台だと・・・」
「それは、あの子の照れ隠しだよ」
そうは、思えない。
「ところで、尾張くん」
「何ですか?」
「どうして君には、私の姿が見える?」
「僕は、霊感が強いんです。なので、ここにいる他の霊たちも、見えています」
「例えば?」
僕は、北の方を差す。
「あそこで、カップルが談笑していますね」
僕の事に、お父さんの方が驚いているみたいだ。
「尾張くんは、下の名前は何と言うんだい?」
「信秀といいます。織田信長と豊臣秀吉です」
「家康は、ないんだね」
「ええ。果報は寝て待ては、よくないみたいです」
鳴かぬなら、鳴くまで待とうでは、いけないということだ・・・
「ツクツクホウシは、知っているね」
「ええ。夏の終わりから、秋にかけて、鳴くセミですね」
「なぜ、この話をしたかわかるね」
口にはしたくないが、しないわけにはいかないだろう。
「僕の人生は、今は秋に入りかけてるということですね」
「その通りだ。法子もそうだ」
物語のストーリーで言えば、起承転結の、転になりかけてるということか・・・
「信秀くんの、これからの人生は、大きく変わる」
「大きくですか?」
「これまでとは、まるで異なる盛り上がりを見せる」
「盛り上がり?」
「その山は、とても急な坂だ。けわしい。でも・・・」
「でも?」
「あの子が支えてくれる。そして、君も法子の支えになる」
二人三脚の登山か・・・
「でも、登りつめた頂上から見る景色は、とても素晴らしい。ぜひ、眺めてくれ。」
そういうと、お父さんは墓標に消えた。
いずれ会おうという、言葉を残し・・・
さてと・・・
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