鴇
時計を、眺めていた。私しかいない部屋、涼しげな風がカーテンを揺らし黄色い空気と一緒に入ってきた。秒針が「1」を行ったり来たりしていた。きっとこの時間は自分だけのものなんだろうと思っていた。外からの音は随分静かになっていた。季節が変わったのか、時間が止まっていたのかはわからない。そうやって「1」をまた跨いで、また跨いだかと思ったら、窓の外から鳥の声がした。うるさい声だった。思わず時計から目を離して、もう一度目をやると秒針はもう「2」を跨いでいた。
錯覚だったのかもしれない。時計を見ていると秒針が止まって見えることがあるらしい。きっとそれだったのだろう。時間が止まるなんてことはないんだから。でも秒針が「1」を指していた時―――時が止まったと思っていたとき、なんで私はなにもしなかったのだろう。そんな後悔だけが残っていた。
蜂 プラのペンギン @penguin_32
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