25●ラノベ残酷物語⑤…むしろ60代が、最良のターゲットではないか?

25●ラノベ残酷物語⑤…むしろ60代が、最良のターゲットではないか?



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 ニッポンの人口ピラミッド(2022年現在、国勢調査等 GD Freak!まとめ)を改めて眺めてみます。


(下記のデータは5歳分まとめた刻みで記述されています)

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65~69歳  男性:約379万人、女性:約399万人  計778万人

60~64歳  男性:約366万人、女性:約372万人  計738万人

55~59歳  男性:約392万人、女性:約340万人  計732万人

50~54歳  男性:約476万人、女性:約467万人  計943万人

45~49歳  男性:約495万人、女性:約480万人  計975万人

40~44歳  男性:約419万人、女性:約404万人  計823万人

35~39歳  男性:約380万人、女性:約365万人  計745万人

30~34歳  男性:約340万人、女性:約322万人  計662万人

25~29歳  男性:約330万人、女性:約311万人  計641万人

20~24歳  男性:約322万人、女性:約306万人  計628万人

15~19歳  男性:約288万人、女性:約274万人  計562万人

10~14歳  男性:約279万人、女性:約265万人  計544万人

5~9歳  男性:約264万人、女性:約250万人  計514万人

0~4歳  男性:約228万人、女性:約217万人  計445万人

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これを10歳ごとに、男女を合算してまとめてみます。


60代  :1516万人

50代  :1675万人

40代  :1798万人

30代  :1407万人

20代  :1269万人

10代  :1106万人

09歳以下:1059万人


一目瞭然ですね。

「60代:1516万人」の高齢層市場をターゲットとする商品を出して継続した場合、20年経過しても、「40代:1798万人」が持ち上がってくるので、市場全体の縮小は免れるでしょう。


 しかし「20代:1269万人」を対象としていたら、20年後には「09歳以下:1059万人」が持ち上がってくるので、市場の縮小は明らか。よほど劇的に出生数が回復しない限り、先細り感は否めません。


 そこで、ターゲットを若者層から「40~60歳代」にシフトし、とくに60歳代を重視したラノベという発想が出てきます。

 60代向けのラノベ?

 出版社のラノベの編集氏が20代とか30代の若手さんだったら、「アホかいな、バカにするな」と一蹴されるでしょうが、私はけっこう真面目に「60代向け」が成立すると思っています。


 だって、40代から60代の中高年層と、20代以下の若者層を比較して、どちらがお金持ちですか? 中高年層の方が、可処分所得は著しく大きい。

 20代以下の若者層は、私たちが思っているよりも、本を買わなくなっている……いや、お財布の中身が乏しくなっているというのが実情では?


 というのは、文庫本の値段、上がり続けているからです。


ネットのニュース

●文庫本新刊平均800円超す 部数減響き20年で25%上昇

   2022年4月2日 日経新聞

文庫本は手に取りやすい価格と持ち運びに便利なサイズ感から、幅広い読者層に親しまれてきた。「ワンコイン」のイメージが浸透していたが、実は平均価格はこの20年で25%値上がり。消費税込みでは一冊800円を突破した。

出版科学研究所(東京・新宿)の調査によると、文庫本の税抜きの新刊平均価格は2021年に732円と、01年の587円から約25%上がった。税込みでは805円となり(以下略)


 たかが800円とバカにできません。

 とくにこの一、二年で、物価はなにもかも狂ったように暴騰しました。水道光熱費に住居費、交通費、食品から衣料品まで、何もかも一割二割三割と上がっています。

 就職しても、非正規が半分近く。薄給で不安定です。

 若者は20年前に比べて、明らかに貧しい。

 一冊800円の文庫本、とてもホイホイ買えません。

 私でも、躊躇します。ケチケチ生活者にとって一日分の食材費ですからね。ただ、「これは」と思った本は一万円以上でも買いますし、あとで後悔することもありません。それが中高年の強みです。


 また、若者は金銭的に余裕ができたら、おそらく文庫本よりも先に、スマホの各種アプリやゲームを楽しむでしょう。彼氏彼女が出来たら、もちろんデート費用が最優先になります。


 若者は貧乏です。ただでさえボンビーなのに、年々苦しくなってきました。

 この先もおそらく生活は楽にならないでしょう。

 2023年春は企業の賃上げが相次ぎましたが、物価高を吸収するには全然足りません。(食品の消費税をゼロにすれば生活は画期的に良くなるでしょうが、商品が値上がりすれば消費税もより多く取れるので、消費減税はやりませんね。お役所は「物価高ウェルカム」なのですよ。今後の改善は、現時点では見込めません)

 しかしこの現実は、ひょっとして、出版社の編集氏さまには実感できないかも……しれません。

 出版社勤務の皆さんは、概して収入が高いからです。


 一方……

 50~60歳代となると、子供は成長して就職し、親はようやく「好きなことにためらわずお金をかけられる」ようになります。

 グルメに旅行にブランド品に……となるのは常道ですが、たとえばファンタジーやSF系のアニメ作品が好きでオタクな人は、ポンと数万円かけて、DVDやブルーレイのBOXとか、あるいはフィギュア、コミックの限定版セットなどを大人買いするでしょう。


 アニメ、コミック、フィギュア、プラモ……それら、オタクな商品の市場は、いまや中高年層にリードされているのではありませんか?


 ならばラノベの出版でも、狙うべきは「中高年オタク」族ってことになりますね。

 そりゃ、中高年になってオタクなショップへ直接買いに行くのは、気恥ずかしいでしょう。

 しかし、ネット通販で事足ります。

 ガンプラなどのプラモも含めて、みんなネットで買えますね。

 ネットは注文が楽だし早いし、なによりも店頭まで出向く交通費が節約できます。交通費に往復千円かかるのなら、グッズを買う方に回すでしょう。


 そういった「中高年オタク市場」を狙って大成功しているのが……

 あの「シン・〇〇」シリーズですね。



   【次章へ続きます】





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