13●“借り読む”の発想。“泡”の外へ出る“真田丸”なサイト、あればいいな。
13●“借り読む”の発想。“泡”の外へ出る“真田丸”なサイト、あればいいな。
ここで語るのは、あくまで“タラレバ”の仮定の話です。
“こうなる”と断定するものではありません。
私の個人的な創作的妄想の話です。根拠のない夢物語です。
その点、どうかご了承下さい。
*
無料小説投稿サイト“書く読む”の隣に、“借り読む”というサイトが併設されたと仮定しましょう。
“借り読む”のサイト、どのように運営されるのでしょう。
あ、これ全く、私の想像上のイメージですよ。
実現性は一切関係なし、こんなことがあったらいいな……という夢の話です。
“書く読む”サイトはよくできています。
作品のタイトルページには、“仮称ママゾン”のブックストアと同様の書誌情報が載せられています。星の数が5個でなく3個であるだけで、カスタマーレビューの体裁なんか、そっくりですね。
つまりこのタイトルページに本の表紙写真とお値段と決済方法を張りつければ、すぐにでも販売できるようなスタイルなのです。
そこで隣にそっくりのコピーサイトを開設し、チョチョイと改造して、“借り読む”のサイトとします。
これは、電子本として体裁を整えた小説作品を、電子的にレンタルするシステムのサイトです。
つまり“電子貸本屋”です。機能的には私設の“有料電子図書館”ですね。
対価を支払って、作品を閲覧します。
閲覧の決済はポイント制です。
たとえばポイント300点(三百円分)+税で、60日間、およそ二か月閲覧できるとしましょう。
お客様は“借り読む”の登録会員となって、ポイントを購入します。
閲覧一回ずつのバラ売りでなく、1500点のポイントを1500円+税で購入します。
支払いは各種電子決済のほかに、コンビニ支払いも可能です。
レンタル(閲覧)される作品は、最初は、お隣の“書く読む”のサイトから入居してきた作者さんの著作物が中心となり、いずれは、“借り読む”サイトへ直輸入の新規入居者が増えてきます。
作品は横書きで読むスタイルと、縦書きのスタイルがあります。
縦書きは文庫本のフォーマットで定型化されており、自動的に制作されます。
実は“同人誌・個人出版”を扱う既存の電子書籍販売サイトでは、自分の作品を電子本の体裁に落とし込んで加工する方法がまちまちで、いささか面倒なようです。
そして、イラストをつけたくても、自分で素材を調達しなくてはなりません。
“借り読む”サイトでは誰もが同じ文庫本スタイルに表示されますので、作者それぞれが簡単にページを加工して掲載(出品)することができます。
作品の冒頭部分は“試し読み”とし、その先を読みたいお客様は300ポイント(300円)を支払い、60日間、全編の閲覧が可能となる仕組みです。
閲覧したお客様は★で評価し、レビューを書くことができます。
このように、“書く読む”サイトをコピーしたシステムをベースに、いくつかの改造を加えて、作品を有料レンタルする“借り読む”サイトをオープンさせるのです。
海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦“いずも”をチョチョイと改造して、最新戦闘機F35を搭載する空母“いぶき”モドキに変身させるようなものですね。
では、このF35にあたるものは何でしょうか?
そう、イラストの搭載です。
“書く読む”サイトにはイラストの搭載機能がついていません。
他のサイト、“○○になろう”や“〇ベル〇ップ+”とかにはついていますね。
ということは、意図的にイラストの掲載を避けたものと思われます。
しかし、“借り読む”にはイラストを掲載すべきです。
作品の表紙ほか数点のイラストが望ましいでしょう。
お客様にとって、イラストのイメージは文章と同等のウェイトがありますから。そうすることで、“書く読む”の作品群と、ビジュアル的な差別化をはかれるわけです。
イラストはどうやって調達するのでしょう。
“借り読む”の隣にイラストや漫画の同人誌レンタルサイト“借り観る”を立ち上げて、こちらでも300ポイントで60日のレンタルを行います。
それとも既存のイラスト・マンガ投稿サイトとコラボするか、ですね。
ターゲットは、かのマンモス同人誌即売会に出品されていた、セミプロの絵師の皆様です。
そしてサイトの管理者は、“借り読む”の小説の作者と、“借り観る”か、外部提携サイトのマンガの作者を引き合わせ、コラボさせて、作者同士で交渉のうえ、“借り読む”の小説作品にイラストをつけていただくわけです。
“書く読む”のサイトと、新設した“借り読む”および“借り観る”のサイトは緊密にリンクします。
“書く読む”サイトに登録している〇万人かが、まずはレンタルの最初のお客様として想定されるからです。もちろんサイトオープン後は、出版社の電子書籍販売サイトにリンクしたり、何らかのイベントを講じるなど、全く新規のお客様を開拓するためのプロモーションが必要となるでしょう。
さてレンタル一回分、300円の分配率(取り分)はどうするか?
モデルを単純化するために、小説著者100円、イラスト絵師100円、サイト管理者100円としましょう。
レンタルの目標回数は、小説一作につき千回です。
千回も? と驚きますが、一年かけて達成すると考えましょうね。
300円の本を千人に売るのと同じですね。
それが達成されると、売上は30万円となり、小説著者が10万円、イラスト絵師が10万円、サイト管理者が10万円を手にします。
ショボい金額かもしれませんが、小説作者にとっては、もしもレンタル数が伸びて一万回に達したら百万円の収入になるという計算です。
一方、プロ作家が700円の文庫本を同じく一万部印刷・出荷されたときの印税は10%とみて70万円ですね。
これと比較すると、レンタル千回で10万円というのは、プロ水準に劣らない金額といえるでしょう。
しかしサイト運営者は、レンタル千回で儲けが10万円では少なすぎますよね。
サイトの維持費や、作品の作者に電子文庫本化するフォーマットを提供したり、レンタルに伴う事務費、その他折衝費といったものがかかります。大きいのは人件費、そして税金もですね。
まずは、サイト内にできるだけ広告を張り付けて、サイト管理者の収入源にされることでしょう。
それに加えて、最初のイニシャルコストを補填するために、作品を出品する小説作者から、各三万円の入会金を納めてもらう……といった方法も考えられます。
初期の参加者が千人いれば三千万円になりますね。
といっても、小説作者はただ取られるだけでなく、この三万円で、レンタルのポイント三万点を購入したことにするのです。レンタル百回分です。
自分の作品を自分でレンタルする“自己借り”はダメとして、他者の作品のレンタルに使えるようにすれば、サイト開設初期のレンタル売上の活性化に役立つでしょう。
この三万円を回収するには……
作者はレンタル三百回を達成することです。頑張りましょう。
小説の出品者は、どれくらいの人数になるでしょうか。
基本的なスケールとして、千人は欲しいところです。
このうち百人がレンタル千回を達成してくれれば……
それだけで100人×1000回×300円で三千万円となります。
これは、1人のプロ作家が1000円の本を3万部売るのと同じですね。
まあ、凄くバクッとした考え方ですが、“借り読む”のビジネスは……
「セミプロ百人で、プロ一人に匹敵させよう」という、薄利多売のチープマーケット開発となるわけです。
チープ国民による、チープ国民のための、ごく真剣な同人誌レンタルビジネスというところでしょうか。
オール電子の世界ですので、印刷費や流通経費、書店からの返品リスクなどは徹底して削減できます。そうすることで、小さな売上から少しずつ利益を生み出す考え方ですね。
もしもこの百人のうちの誰かが大化けして数万回のレンタルを実現したら、サイト管理者様は、この作者の紙の本へのデビューを検討してみてはいかがでしょう。
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以上、夢物語、私の個人的な願望ですが、こんなサイトができたらいいな……というお話です。
要するに、あのマンモス同人誌即売会を電子化するような考え方で、営利のプロ作家と非営利のアマチュア作家の間に位置するセミプロ作家の拠点サイトを、紙の本の販売でなく“オール電子のレンタル”という形で実現することができないかな? ……と、妄想してみた次第です。
あ、提案とか意見とか要請とかではありませんよ。
ただの、独り言です。
と、言いますのは……
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私たちの現実の、カクヨムをはじめとした無料小説投稿サイトの歴史を考えてみましょう。
まだ、普及して数年といったところ。
しかしたぶん百数十万人かそれ以上が参加しています。
新規参入も目白押し。
ビッグバン的な急拡大、無料作家のインフレーションということかもしれません。
しかし、膨らんだ風船は、何らかのコントロールを施さないと、パチンと破けるかもしれません。
「雑貨屋とおできは大きくなると潰れる」という、業界的なことわざもございます。
無料小説投稿サイトは、千変万化で玉石混交なカオス世界でもあります。
この、サイトという
コンテストの受賞傾向にだれもが合わせ、その方が星も集まるとなれば、ますます同じ方向性の作品が集まって、いずれ似た者同士になるでしょう。
よく言えば“粒が
競争の意義は否定しませんが、現状はあくまでも一つの泡の中の競い合いです。
そのエネルギーが泡の中だけで増大していけば、いずれ行き場を見失って……
サイト全体が超巨大なマンネリ団子にまるまってしまう恐れもあるでしょう。
『〇撃の巨人』の、壁の中に閉じこもる人々のように。
すみません、ものすご~く自虐的に例えれば、いつのまにか私たちは“水たまりのボーフラ”になってしまいはしないかと、心配してしまうのです。
『進撃の〇人』の主人公たちが壁の呪縛を突破して海に至り、その彼方の新たな世界に気付くように……
サイトという泡の外側へエネルギーを向けることも、いずれ必要となってくるだろうと思うのです。
それは、サイトの深海に静かに生息している参加者が、自分の力と意志で泡の外の世界へ“打って出る”仕組みではないかと……
それを専用のサイトで行う。
大坂冬の陣の“真田丸”みたいな、出城のサイトですね。
現在のサイトの中には、書店で紙の本が一万部売れるプロにはかなわなくても、泡の外へ出せば千部二千部と売れる作品が、必ずや相当数あるに違いありません。
それらを千部二千部というミニマムなスケールで収支を成り立たせる試みが可能となれば……
私たちは、泡の外側に、新しい世界を発見できるかもしれませんね。
あ、夢物語ですよ。
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