ミミと冬の日
ぼくは冬がきらいだ。
寒いのは苦手だし、町ゆく人々もどことなくせわしない。このあたりは雪がわんさか降るので、毎日雪かきをしなければならない。ぼくはそれをひとりでやる。薪を拾って、暖炉に火をおこす。スープをあたためて、ひとりで食べる。帰ったら暖炉に火があって、夕飯の用意されている家。町の家々の灯りが、もしかしたら羨ましいのかな。ぼくは冬うまれだというのに、冬になると冬を越すための労力とともに、自分がひとりぼっちだということを思い出すんだ。
冬生まれだなんていいことはひとつもない。いいことといえば、毎年の誕生日の朝のため息に、白い湯気がおまけでつくくらいしかない。けれど今年の誕生日の朝、起きると庭におおきな白いケーキがこしらえてあった。……泥まみれの。
真っ赤になった手をコートのポケットに隠して、厚着でふくれた彼はぼくに向かって「うひひ」と笑った。
「はっぴばーすでーミミー はっぴばーすでーミミー はっぴばすでーディアミーミー はっぴばーすでートゥーユー」
ぼくの目に涙が浮かんだ。凍りそうだったので慌ててセーターでこすって拭いた。
「さあ、ケーキをたべて! ケーキをたべて!」
少年と少女がぼくをはやしたてた。ぼくは、ケーキをこわさないように、でも雪がうまくぼくの口に入るように、ケーキに向かってダイブした。
「……ちべたい」
ぼくは笑った。
お題:12月の祝福
制限時間:15分+修正
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