畠中恵 「むすびつき」 (新潮文庫)

今年は雪が多い上に、とにかく寒い。

コタツにすっぽり入りながら、ミカンをむき、あたたかいお茶を飲む。

コタツの上の菓子入れの中には、かわいいおせんべい。

気がつけば、猫と犬が両隣りにやってきて、丸くなっている。

あー、ほっこりする。

こういうときのお供は、あのシリーズでしょう!

新刊(文庫派)も買ってあるしね!

そう!畠中恵さんの「しゃばけ」シリーズ!

文庫版最新刊は「むすびつき」です。


今回は人と人との縁の物語。まさに、結びつき。

長い時を生きる妖たち、輪廻のことわりにのって生きるしかない若だんなをはじめとした人々。

偶然なのか、必然なのか、それぞれの運命が重なり合って、ともに生きる瞬間がある。

縁、なんだよなぁ。

読みながら、呟いちゃう。

そして、なんだか切なくなっちゃう。

今回のお話はみんな、楽しく優しいけど、どこか切ないのです。

「昔会った人」で貧乏神の金次が語るのは、生まれ変わる前の若だんな。

「ひと月半」では、若だんなの生まれ変わりだと名乗る死神が3人もやってくる。

表題作「むすびつき」は、鈴彦姫が自分も生まれ変わる前の若だんなに会っているかもと言い出す。

「くわれる」では、悪鬼の娘さんが300年前の若だんなに恋をしていたと会いにくる。

「こわいものなし」では、妖たちが集まる長崎屋のことを知った夕助が、生まれ変わりの秘密を知りたい、と若だんなのもとを訪れる。

と、そんな感じで、生き死にに関わる話が続きます。

すると、最後の「終」で、鳴家が今の若だんながいなくなってしまう夢を見てしまいます。

そうだよね、今までの若だんながそうだったように、妖でない若だんなは、いつか、みんなより先にいなくなる。

不安になっちゃうよね。

泣きじゃくる鳴家に若だんなは声をかけます。

「今、私はここにいるよ」

来るかもしれない別れや、見通しがもてない未来を思うと不安になるけど、「今、ここを生きること」を忘れずにいたいですね。

コロナ禍から抜け出せなかったこの年末年始。

ちょっと不安も抱えつつ、あたたかいコタツの中で、あたたかい長崎屋の離れにいる気分なりました。

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