第2話 異世界へ

さかのぼること1か月前。

俺は高校卒業後に務めた町工場が潰れ、無職となった。

両親は昨年事故で失い、実家だけが俺の財産となった。

残念ながら俺には兄弟もおらず、親戚もいない。

これからどうしようか途方に暮れていた。

しかし、こんな時でも腹は減るらしい。

キッチンで何か作ることにした。

確かインスタントラーメンの買い置きが残っていたはず。

ラーメンを探し、キッチンの床下収納の扉を開ける。

そこには収納庫ではなく階段があった。

はぁ? ここは数日前までは収納庫であった。

しかし、今は地下に続く階段となっている。

混乱しているが深呼吸をして何とか心を落ち着ける。

そっと扉を閉め、とりあえずは食事をすることにした。

現実逃避というやつだ。

戸棚でインスタントラーメンを見つけ食べた。

お腹が満たされたので再度扉を開いた。

やはり階段は存在していた。

懐中電灯を片手に階段を降りてみる。

階段の先は小部屋となっていた。

その奥には扉があった。

小部屋の中央にある机にはメモと宝箱のような箱があった。


『あなたを異世界にご招待いたします。箱の中には異世界で必要なものが入っているので必ず中を確認してから扉を開けてください。』


なるほど、箱を開ければ良いのだな。

箱を開けると脳内にアナウンスが流れ始めた。


『ステータスを獲得しました』

『異世界に対応できる身体になりました』

『異世界言語、鑑定、インベントリを獲得しました』

『成長促進、クリエイト、剣術を獲得しました』

『異世界ゲートの使用権限を獲得しました』


やっと脳内アナウンスが止んだ。

箱を開けることがトリガーとなっていたようだ。

箱を開ける前に異世界の扉を開いてしまっていたら死んでたんじゃないか?

対応できる身体ってなんだよ。

知らないうちに改造されたようだ。


箱の中には短剣と革の鎧、革の靴、革の盾が入っていた。

それに小瓶に入った液体もある。

小瓶を見つめるとスキル鑑定が発動した。


ポーション: キズを回復できる薬品


定番のポーションだった。

割れたら嫌だなとバックを持ってこようと考えると黒い穴が現れた。

これが亜空間倉庫かと自動的に鑑定が働き理解できた。

そこにポーションの小瓶を放り込むと穴が閉じ、目の前に透明なボードが現れ一覧が表示された。


インベントリ内一覧

 ・ポーション:5


それから定番のアレを言ってみよう。


「ステータスオープン!」


*ステータス

 名前: 佐藤 健太

 性別: 男

 年齢: 20歳

 レベル: 1

 状態: 満腹


 HP: 100

 MP: 50

 STR: 100

 DEF: 80

 AGI: 80

 DEX: 80


 スキル

  鑑定、インベントリ、剣術


 ユニークスキル

  異世界言語、成長促進、クリエイト


箱から装備一式を取り出し、インベントリに収納した。

一旦家に戻り、準備を行うことにした。

もしかすると扉を越えたらこのまま戻って来れない可能性がある。

職を失い、家族もいない現実に未練は無いが、無限収納があるのだから持っていけるものは何でも持っていこうと思う。

貯金を下ろし、買えるだけの食料と便利な道具を収納していった。

電気があるのかわからないので家電は使えないかもしれないな。

衣服はなるべく買って行こう。

きっと素材が良くないだろうし。

テントや寝袋などのアウトドア用品もそろえた。

十分に準備ができたので再び扉の前に向かった。

深呼吸をし、気持ちを落ち着けてからそっと扉を開いた。


扉の先は、また同じような小部屋となっていた。

机の上にはまたメモが置いてあった。


『異世界へようこそ。あなたの異世界ライフに幸あれ。』


そして、もう一つの扉をあけるとそこには見なれない植物が生い茂る森になっていた。

本当に異世界に来てしまったようだ。

ワクワクが止まらない。

愛読書のような異世界転移が俺に起こるとは。

死んで神様に会ってチートスキルをもらうイベントはスキップしてしまった。

でも、チートスキルは獲得しているので問題ない。

そういえば、俺の使命ってなんだろう?

まあ、招待されたわけだし楽しもうと思う。

そのうちイベントのようなものがあるだろうし。

そして確認しなければならないことを思い出した。

一番の問題の現代に戻れるかの検証だ。

実は怖いので扉は開けっ放しになっていたのだ。

現代の方の小部屋に戻り、扉を閉める。

もう一度開けてみると異世界の小部屋にまた繋がった。

次は覚悟を決めて異世界側に行ってから扉を閉めた。

恐る恐る、扉を開いてみると現代の方の小部屋につながっていた。

安心して体中の力が抜けた。

いくら未練が無いと言ってもやはり帰れないとなると恐怖である。


戻れることが分かったので異世界の探索を行うことにした。

装備を整え、外への扉を開く。

扉の外に出て後ろを振り向くと、そこには森の中に佇む一件の小屋があった。

周囲5mほどには木は生えておらず、草むらになっていた。

草むらから一歩森へ足を踏み入れると背筋に寒気がした。

身の危険を感じ小屋に戻った。

森を見つめていると角の生えたウサギらしきものが現れた。

殺意を持ってこちらを睨んでいる。

しかし、草むらには入ってこない。

入ってこないのではなく、入れないようだ。

この小屋の周りには結界のようなもので守られているのだろう。

近づきウサギを観察する。

威嚇しているがやはり入れないようだ。

手に持った短剣を構え、草むらの安全エリアから切り付けた。

ウサギは致命傷を負い、倒れた。


『レベルが上がりました』


レベルアップしたようだ。


*ステータス

 名前: 佐藤 健太

 性別: 男

 年齢: 20歳

 レベル: 2

 状態: 緊張


 HP: 110

 MP: 60

 STR: 120

 DEF: 90

 AGI: 90

 DEX: 90


 スキル

  鑑定、インベントリ、剣術、気配探知


 ユニークスキル

  異世界言語、成長促進、クリエイト


ウサギの殺気を感じることで気配探知を獲得した。

気配探知を発動しながら森に入り、倒したウサギを回収した。

気配探知に反応があり、慌てて草むらに戻る。

また同じ角が生えたウサギが現れた。

今度は落ち着いて鑑定してみる。


一角ウサギ: Fランク。食用可。


食えるらしい。

そして、魔物にはS~Fまでのランクがあり、こいつは一番弱いFランクということになる。

先程と同じように安全エリアから短剣で突き刺し、一角ウサギを仕留めた。

突き刺すときに力を込めていると身体強化のスキルが得られた。

そして、10匹狩ったところでレベルが3に上がったので今日はここまでにし、我が家に帰ることにした。

ウサギはインベントリに収納したので腐ることはないだろう。

明日、裁いてみることにする。


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