第140話 国境線の戦い3
左手組が敵の兵士達との会敵を果たしていた頃、右手側では少数の召喚士系プレイヤーが守りを固めていた。
「アリサってば、一緒に戦おうって誘ったのにー」
かつてジンと共にこの世界に降り立った少女、アリマはテイムした地竜を撫でまわしながら、不満げに頬を膨らませた。
「まぁ、それは都市での正面はもう戦いになってるけどさ」
地形の都合上プレイヤーを二手に分散しなければならなかった国境の防衛戦。二手に分かれたのはヌメロンギヌスが指揮するプレイヤーであり、参加したプレイヤー全体で見るならば、砦に残り籠城戦を選択した第三のグループが存在していた。
アリマの相棒たるアリサは砦に残っての防衛戦を選択し、アリマとは別の戦場に立っているのだ。
「ジンもいないし…もぉー!」
ジンのモンスター召喚を目にしていたアリマは、自身の魔導書が召喚系ということもあって、ジンと合流できると考えていたのだ。実際にジンがこの戦いに参加していたのならば、下僕召喚の力を発揮すべく右手組に参加していただろう事は想像に難くない。
三人で一緒に戦う心算であったアリマの望みは叶わず、こうしてふてくされている。
「あーあ、こんな事なら私も
ここで来ないかもしれない敵を待ち構えるのではなく、アリサのように外壁の上から魔法で攻撃する固定砲台の方がよっぽど楽しそうだった。今だって十秒に一度は爆発音が響いている。
「敵っ来ます!」
外壁に横顔を近づけて正面の戦いを覗き見していたプレイヤーが、敵が来たと慌てながら声を上げた。
「よーし『召喚≪カイゼルラビット≫』!」
「やっと戦闘開始か『サモン≪スケルトン≫』」
「張り切って行きますよバン君!」
ジンがそうだった様に、召喚する時の言葉はプレイヤー毎に任意で設定できる。最初に設定されているそのままのプレイヤーもいれば、不意打ちに仕えるからと降伏の言葉を割り当てる者もいて、事情を知らない者が見れば右手組は明らかに不審な集団である。
右手組に選出された者は、個人でのパーティ運用が可能なプレイヤー。つまりはプレイヤーが一人であるにも関わらず、まるで何人もいるかのような頭数を揃えられるプレイヤーである。
人手がない故の苦肉の策であったが、以外にも砦に集まった召喚士系プレイヤーは多かった。彼らは闘技大会で最大の持ち味である召喚をすることが出来なかった。または召喚が出来ないと知って大会に出なかった者達であり、多くの召喚士系プレイヤーがこの防衛戦はそういった者への運営イベントと認識して参加していたのだ。
「あー、やっぱりだ。過剰戦力だよ…ヌメロン、サモナーを下に見過ぎ」
彼らはMPとスキルレベルという限界こそあれ、たとえ支配下のモンスターが倒されたとしても再召喚が可能であり、たっぷりとポーションを持ち込んだ彼らを相手に消耗戦をするなど愚の骨頂なのだ。
「戦いが始まってるから、今更中には戻れないし」
アリマはサモナー達が籠城して、外壁の上からモンスターを投下し続ければ難なく勝てたのではないかと打倒されていく兵士たちをぼんやりと眺めながら独り言ちる。
「ま、私が楽な分には良いけどね」
全滅間近な左手組と変わって、右手組は一人のプレイヤーも倒れることなく敵を全滅させた。
「物足りねぇな。打って出るぞ!」
「あ、一人で稼ぐ気か!」
「経験値稼ぎには打って付けだな。よーし、正門に夢中な奴らの横っ腹を叩いてやんぞ!」
余りにも簡単に敵を蹴散らした右手組は、戦えずに敵が全滅したプレイヤーも存在する程の快勝を収めた。彼らは自身の更なる経験値を求め、籠城を選択したプレイヤー達の戦いに介入を試みる。
多くのプレイヤーが死に戻りを経験する中、休憩を取る時間も与えられないままアメシスト帝国攻撃軍の本体が到着した。
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