第138話 国境線の戦い1
ジンたち一行が港から船を出し、国外逃亡を図っていた頃。残されたプレイヤー達は、カルセドニーを守ろうと、アメシスト帝国との国境に集結していた。
国境にある砦にたどり着いたプレイヤー達は、貸し与えられた待機スペースで戦いに備えて動き回っている。
「良いか!」
一人の男性プレイヤーが声を上げると、その場にいた全ての視線が声のする方へと向けられる。
「回復アイテム確認、振れるステータスポイントの確認が終わっていたら聞いてくれ!」
誰が騒いでいるのかと様子を見ていたフード姿のプレイヤーが、見覚えのある姿にポツリと呟いた。
「…ヌメロンギヌス?」
静まり返った部屋の中で、声はその場にいた者達の耳に入った。
「そう、俺はヌメロンギヌスだ。相手が帝国つー勝ち目が薄そうな相手と戦えるようにするために、無理やり場の仕切りを任せられたヌメロンギヌスだ」
え、なに、そうなのと静まり帰っていたプレイヤー達は、コソコソと話し始める。
「俺は戦いの指揮を執ったことも無ければ、帝国の奴らがどれだけ強いのかも敵の規模もわからない!」
急に声を荒げたヌメロンギヌスの声に、プレイヤー達はピタリとお喋りを止める。
「砦を利用した防衛戦ではあるが、詰めている兵士も少なく指揮も拙い。だが忘れないで欲しい!」
そう言うと、ヌメロンギヌスは集まったプレイヤーの顔を視界に収める。不安そうな表情をする者。好戦的な態度を隠そうともしない者。大したイベントではないと楽観視する者。ここに集まった全てのプレイヤーには、それぞれの考えがあって遥々この国境までやって来たのだ。
「俺たちが負ければ、この国は滅ぶのだという事を!」
ヌメロンギヌスの演説を聞く内に、プレイヤー達はヌメロンギヌスの話に引き込まれてゆく。
「このケルバラン砦は、国境を覆う3つの監視塔とその後ろに控える陸上要塞からなるカルセドニー最大の軍事施設である!」
国境を監視する様に建てられた3棟の頑強な監視塔は、アメシスト帝国との国境沿いの凡そ全域を監視している。この3つの砦は長い防壁で連結されており、内2棟は後方に位置する要塞にまで続ている。
上空から当たり一帯を確認する事があれば、砦の全容を見て三角定規を思い出しただろう。
「交渉の結果、砦の防衛設備の使用許可をもぎ取って来た。のちにやって来る全ての
拳を握りしめた右腕を振り上げ、高らかに宣言する。
「勝つぞ!」
一拍の静寂の後、地上要塞の一室からは砦全体を揺らすような大きな雄叫びが響いた。
集った戦士たちの指揮は高く、万全と整えた装備を手に開戦の時を待つ。戦うべき相手、アメシスト帝国の軍隊が姿を見せたのは30分後のことであった。
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