第133話 混乱と告白
「おいおい…おいおいおいおいおい。何だよ…何なんだよ!」
「カルセドニーが解体って…これからゲーム始める時はどうしたら良いの?!」
「戦争だと…」
「一体何が起きてるのよ…」
『リリネット…これって』
『そうね…来るべき時が来たのよ』
二人の妖精たちは会場のプレイヤー達に聞こえない様に言葉を交わし、小さな体で会場を飛び回ると、マイクに向かって話し始めた。
『カルセドニー王国、第一回闘技大会は無粋な横やりを受けてしまいましたが、順調に決勝戦が終了していたこと。さらには、本戦と予選を含めた獲得ポイントの計算に不備がない事を確認しました。よってカルセドニー王国、第一回闘技大会について、全行程が不足なく完了した事をお知らせします。また予定しておりました優勝者、準優勝者、三位入賞者へのインタビューについては、ご本人の要望をお聞きした後で公式ホームページより公開の予定です』
『みんなーおつかれー』
『ではでは、なんだか戦争らしいけど…頑張ってねー!』
言うべきことは終わったと、二人の妖精は姿を消した。
「ちょ、結局何が起きてるんだよ!?」
困惑するプレイヤー達の疑問に、回答する声はどこにもなかった。
♪
システムから宣戦布告の知らせを受けたジンは、急いでフィールドからカルセドニーに引き返していた。
「危なかった…もう一時間も外にいたら街の中には、入れなかっただろうからな」
どこの国でも戦時下ともなれば、人の出入りを制限する様になる。宣戦布告を受けたのだから、既に街の門が閉ざされていても不思議では無かった。
「…取り合えず宿に戻ってみるか?」
情報を求めるならギルドに向かうのが一番なのだろううが、ギルドだと人がごった返していて碌に話を聞けないのではないかと思ってしまったのだ。
「おっさん!」
宿についた途端に宿屋のおやじに話しかける。自分では冷静なつもりだったのだが、知らず知らずの内に焦っていたのか大きな声がとび出していた。
「おお、なんだっ驚かせるんじゃねぇぜ」
「おっさん…飯」
「あ?」
「飯作ってくれよ…忙しくなる前に」
「おめぇ…戦う気なのか?」
おやじは国を守る為に冒険者が戦う心算なのかを確かめたいのだ。俺達には戦う理由がないから。
「…正直に言うと分からない。俺たちにとっては流れ着いた国ってだけだし、報酬が出るかも分からないからな」
「……」
「中にはろくでもない領主なんかもいた…。でもな良い思い出なんかもちゃんとあるのさ」
「…そうか」
「まぁ、恩返しって訳でもないが―多少は「いや、辞めておけ」っ!」
「負けが見えてる戦いに行くことはねぇさ」
「おっさん?」
「なに…この国は役目を終えたのさ。今すぐこの国から逃げな」
何を言っているんだ。
今は戦力が一人でも必要な時じゃないのか。
「まぁ、そうだな。何も知らせずに出て行けと言われても、そうはいかんよなぁ…。分かった…話してやる」
「あ、ああ」
俺を止めるその理由を。
「賢人パラケウスとの約束を初代カルセドニー王国国王クレイク・ファーバーがどうやって果たしたのかをな…」
「おっさん」
「俺はクランプ・ファーバー。もう何の価値も無い王族の一人だ」
宿屋の仮面を脱ぎ捨てて、クランプ・ファーバーは静かに語りだした。
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