第129話 闘技大会 予選2
「危なかった…」
命からがらナイフ使いの二刀流を撃退し、砂丘の影に身を寄せる。
「相手が第二陣でなければ…」
俺が
つまるところステータスの差である。
当然の話ではあるが先にゲームを始めた者の方がレベルが高く、または強くなっているのはオンラインの世界でなくとも自然な事である。例えばβから始めたプレイヤーに対して、ゲームを始めたばかりの第二陣プレイヤーが戦いを挑んだとする。
結果は当然、βからじっくりと育て上げたキャラクターを操るプレイヤーが九分九厘勝利を勝ち取る。
「それでも進化出来てなかったら、一撃死だったもんな。ホント、レベル上げを目標の一つにしておいて良かった」
PvPの戦場として択ばれただけあって、この砂漠フィールドは広い。とは言え周囲を見渡してみれば、照り付ける太陽を浴びた影が揺れているのが見える。
「今度はこっちから、攻めてみるかっ!」
砂丘の影から、見えた人影を目指して走り出す。
精々遮蔽物は、高低差が出来る砂丘とオアシスに生息する細めの木が数本ある程度なのだ。
初めから隠れるのには向いていない。だからこそ、魔法が足りないだとか悩んでいる暇など無かったのだ。
「この距離『パワー…スラッシュ!』」
会敵したのは、剣と盾の昔ながらの戦士スタイルのプレイヤー。近づいてくるのには気が付いていた様子で、円形の盾を構えている。
受け止める心算か。
「おおっと!」
正面から受けて止められて、パワースラッシュの威力が大きく減退する。盾に大鎌の切っ先が触れ、衝撃が伝わる前に体を引いた様だ。衝撃を上手く逃がされてしまった。
「『ブロックカウンター』だ!」
体を引いた反動を利用して、こちらに突き入れられる細身の剣。
「レイピアか!?」
咄嗟に後ろに飛ぶと、レイピアが頬を掠めた。
「ッチ『ダークランス』」
苦し紛れに放った魔法がレイピアの刀身に当たり、剣は相手の後方に弾き飛ばされる。
「ッ『パワースラッシュ』!」
チャンスと見て再び大鎌を振るう。
「クソッ『ブロックガード』!」
円形盾を構えて、再びガードの姿勢を取る。
こちらの攻撃で武器を奪い、体勢を崩す事が出来た。これで止めと魔法を放とうとしたが、その前に敵対していた剣士の胸から刃が生えた。
「熱くなるのは良いけど、これってバトルロワイアルなんだよね・・・1キルゲット」
次なる闘争相手として現れたのは、ロングソードを腰に巻いた短槍使い。
「…漁夫の利か」
「そういうことだねぇ。正面からやり合うのは、馬鹿のする事さ」
「…」
「だから君とは戦わないよ。本線前に手の内を見せたくないからね」
言うや否や凄まじい速度で、俺の攻撃範囲から離脱して行く。こちらの間合いを正確には把握できていないとは思うが、あの速度を攻撃に転用されれば戦っていた剣士の様に反応できずにやられてしまううかもしれない。
「…ッチ」
何にせよプレイヤーを撃破できなかったのだから、骨折り損のくたびれ儲けだ。それだけでも嫌な展開だが、あの速力は相性が途轍もなく悪い。大鎌ではとても対応が間に合わないのに、一撃離脱されれば魔法での迎撃も難しい。
この周辺で戦い続ければ、奴に獲物を献上させられ続けるハメになるだろう。
「場所を変える…しかないな」
大鎌を肩にかけ、周囲を警戒しながら短槍使いとの距離を取る様に移動を開始する。 短槍使いから逃げ延びる様に、俺はオアシスを目指した。周囲を警戒しながら前進するだけでもガリガリと集中力が削れていく。
俺ジンの強みと言えばなんだろうか、そんな事は改めて考えるまでもない。召喚、召喚、召喚である。上級職であるネクロマンサーも、そんな物量攻撃を行うファンタジー世界で軍勢を組織できる限られた役所だ。その他に軍を組織できると言えば、各国の王や領主のような他の誰かを束ねる役目を持つ者ぐらいだ。
そんな俺の強みをどうして生かしていないのか。いや、どうして生かせないのかを考えると、何だかやるせない気持ちになってしまう。理由を聞けば仕方がないとも思うし、俺がの短槍使いのような個人技で戦うプレイヤーなら当たり前だと口にしていただろう。
簡単な事だ大会に参加しているプレイヤーには、パーティの結成及び配下のモンスターの呼び出しや使役を制限しているのだ。まぁ召喚魔法が解禁されていれば、延々とモンスターを召喚するだけの見ごたえの無い戦いになるだろうし、ポーション類のアイテムも使用禁止なのだから、俺の様に魔法でのMP回復手段を持っていれば前衛に特化したタンクを始めとする戦士たちは、魔法で一方的になぶられて終わりになりかねない。
まぁ、俺の『ダークピッド』も吸引するスポイトを狙って攻撃すれば、簡単に迎撃されてしまう弱点があるし、無抵抗でやられてくれる相手は少ないだろうとは思うのだが。
「…うわっ!」
足元の砂が渦を巻いて陥没する。
「あ、蟻地獄か!」
土属性魔法による罠が設置されていたのか、足元が突然に沈み込むまで全く気が付かなかった。
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