第92話 妹様冒険譚、その3

 三人で幾つかのクエストをクリアし、レベル的にもカルセドニー周辺なら余裕が出て来た頃に尾音おとねちゃんがぽつりと呟いた。


「そういえばさー」


「うんー?」


「僕たちって全員、獣人族なんだよねぇー」


「そうですね~」


 一見、天使のような翼を持つ有翼族。その正体は獣人族のバリエーションであり、なんのことは無いただの鳥系統の獣人族である。つまり、私たち三人は『黒猫族』『豹人族』『有翼族』となかなかに人目を引く三人組なのである。


「せっかくみんな獣人なんだから、なにかそれらしいことしたいぞー!」


「なによ、それらしいことって…」


「うーん、チーム名を決めるとか?」


「それのどこが、それらしいの?」


 わざわざチーム名を付けてみた所で、誰かに名乗ることも無いのだから。


「どちらかと言うとパーティー名になるのでは?」


「それもそうか…」


 しまった。椿つばきちゃんが、話に乗ってしまった。このままでは、いつもの流されるパターン入ってしまう。


「ね、ねぇ!」


「んぅ?」


「なんですか?」


「えー、ツバキちゃんの回復スキルって、すごく珍しいみたいだよね!」


「そうなんですか?」


 よし、釣れた!


「お姉ちゃんに聞いたら、このゲームでは聞いたことないって言ってたもの。回復はポーション頼みで、回復できるスキルがあるなんて羨ましいって」


「そっかー、他の人たちは回復大変なんだねぇ。あ、通り魔みたいに手当たり次第に回復かけて回る?」


「しませんよ~。危ないですし、ご迷惑ですからね?」


「でも、珍しいのか。変な人が寄って来ても嫌だから、ハラスメント設定弄った方が良いよツバキ」


「それなら、キャラクターを作成する時に」


「あははは、釈迦に説法だったのだー」


「どっちかというと『猿に木上り』ね。まぁ、でも気を付けないとね『猿も木から落ちる』って言うし」


「ふふふ、はい」


 椿ちゃんは何だか、楽しそうに笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る