第93話 妹様冒険譚、その4

 僕たちは今、オンラインゲームの世界で悪意と戦っている。


「カエデ!」


「任せて!」


「「ツインスラッシュ!」」


 僕とカエデとツバキちゃんは、三人で一緒に戦ってきた。


 グリモワール・オンラインにはあるシステムが組み込まれていた。それは戦闘中にHPが一定以下を下回ると装備している武装の攻撃系アーツを習得するという物である。当然、それは一度きりの物ではあったが、その機会に二人が手に入れたアーツこそ『ツインスラッシュ』であった。


 二人が同時に手に入れたツインスラッシュは、一人で使えば唯の二回攻撃に過ぎない。このアーツは、二人のプレイヤーが同時に発動する事で真価を発揮する。


「え、HPが溶けっ…」


 ツインスラッシュは、発動させた二人のプレイヤーが持つ攻撃力の合計値をツインスラッシュに加算し、二連撃を与える。正に成長するアーツとも言える強力な代物だった。


「フッー、さすが『ツインスラッシュ』ね!」


「通常攻撃のダメージに私たち二人分の攻撃力を足した二回攻撃だから…ダメージは通常攻撃6回分ね!」


「二人で使うんですから、12回分ですよ」


「まぁ、HPも一瞬で空になる訳よね!」


 いきなり他のプレイヤーから攻撃を受けてあわわと焦ったとはいっても、これだけの火力を叩き出せれば、大した脅威にはなり得ない。


「それにしても、PKに目を付けられるとはね」


「三対一で勝ち目があると思ったのでしょうか?」


「分からないけど、この程度なら僕たちだけでもよゆーだね!」


「やっぱり目立つのが原因だと思うのよね」


 都市伝説だと思っていたプレイヤーキラー。グリモワール・オンラインって運営に言わせれば、第二の地球なのだ。


 できない事など無い、喧嘩も商売も建国も暗殺も何をしたって良い。それが開発スタッフの望んだ第二世界。


 とは言えゲームという媒体を使っている以上は、年齢制限によるレーティングだとか知的財産権に因る使用不可な言語だとか、出来ない事は出来ない事で多々あるのだけれど。


 そんな中で望まれて生まれた不都合がプレイヤーキラー。いわゆるPK達である。


「やっぱり、羽根が珍しいんだよ!」


「まぁ、一番最初に目が行くもんねぇ」


「ひっぱっても取れませんし、有名税とでも思うしかありませんわ」


「ま、人目気にしてちゃゲームなんて楽しんでられないもんね」


「それより、クエスト進めようね。次はトウガラシの採取…なんでトウガラシ?」


「カエデが「こういうのはまとめて受けるもんなの!」とか言って、片っ端から採取のクエスト受けるからでしょ!」


「内容も見ないで受けるんですから、その内ゴブリンの生首採取とか受けて来そうで心配ですよ」


「もぉー、流石にそんな訳の分からないクエス…ト」


 森の中で一人の少女が叫び出すのは、この後わずか数秒後の出来事。


「えええええええぇェェ!?」

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