番外編 ファミリーのお話
第90話 妹様冒険譚、その1
私、
今、すごく感動しているの。どうしてかって?
決まっている。
「ようこそ『グリモワール・オンライン』へ!」
目の前で可愛い妖精さんが、私を暖かく出迎えてくれているの!
「…はい、確認しました。新規プレイヤーの方で間違いありませんか?」
「そうです!」
興奮を抑えきれないと言った様子で、頬がほんのり赤くなる。
「では、まずはゲームで名乗る名前を設定しましょう」
妖精の言葉と同時にキーボードが現れた。家に置いてある何所でもキーボードが出て来る機械みたいなものだろう。
あ、ゲームの中だったわ!
私は自分の名前をカタカナに変換して、そのまま付けた。私の名前は珍しいものでもないし、何よりオンラインゲームでは必ずと言って良いほど名前が被るのだ。
「性別を設定いたします…えっと」
「もちろん女の子ですよ?」
「はい、では楓様。次にご自身の種族を決めましょう」
そう言われて現れたパネルから、私は迷うことなく獣人族を選択した。私は動物が好きなのだ。
「はい、ではステータスを確認しましょう。ステータスと唱えるか、念じてみてください」
「ステータス!」
ついつい大きな声が出てしまった。妖精さん、驚かせてごめんなさい。
名前 カエデ
性別 女
種族 黒猫族Lv1
職業 未設定
HP 20
MP 20
筋力 10
体力 10
器用 10
精神 10
知力 10
俊敏 5
運 5
種族ポイント 20
スキルポイント 20
グリモワール 不明
武器1
武器2
頭
胴
腕
腰
足
靴
アクセサリー
アクセサリー
アクセサリー
所持金 0コル
スキル
武器スキル
魔法スキル
生産スキル
補助スキル 【気配察知Lv1】
固有スキル 【獣人一体Lv1】
称号
「おおー!」
初めて見るステータスに感嘆の声を上げる。
あれ、種族も獣人族じゃない?
「あら、黒猫族ですね。闇夜の狩人と呼ばれている」
「黒猫ですか?」
なんだか不吉そうな感じがするね。
「獣人族は種類が多く、選択式なのにランダムだなんて言われるくらいですから…」
何だか悲しそうな顔になる妖精さん。
「あ、あの、大丈夫ですよ!」
何が大丈夫なのか分からないが、私に不満はない。これが尻尾の短いウサギだったら渋ったかもしれないけど。
「そうですか?」
「はい、次に進みましょう!」
ではっとキャラクター作成を進め始める。
「次は職業を決めます」
ザーッと一気に表示される職業の数々、とても一つ一つみていられません。
「何かおススメの職業とか無いですかね?」
とても現役中学生のセリフとは思えない言葉を口にしながら、妖精さんを凝視する。
「そうですね……他のプレイヤーの方は種族に有った職業を選択されることが多いですね。黒猫族ですと…これらでしょうか?」
私の前に並びに並んでいた職業がスッと消えて、いくつかの職業名が浮かび上がる。
狩人
弓や罠を用いて狩りをする者。
下忍
忍者の修行を始めた者。
戦士
戦いの中で生きる者。
・
・
・
なんだかパッとしない。
「うーん」
「やりたい事から絞って行くのもありですよ」
やりたい事か…つい獣人族を選んじゃったけど魔法も使ってみたい。自分の手の平から炎とか出してみたいし。
「魔法とか?」
「魔法ですか…たしかに猫系統ですと進化次第では、強力な魔法を使うことが出来ますが」
「使えるんですか!?」
元々獣人族は魔法が使えない訳では無い。ただ魔力が少ない者が多いだけなのだ。
「私のおススメは斥候型なんですが…既に【気配察知】を覚えていますし」
そう言えば、ステータスにそんなのが乗っていた。
妖精さんに聞くと動いている気配が分かる様になるとか、レベルが上がるとスキルで隠れている相手も見つけられると教えてくれた。
「…じゃあ全部まとめると魔法剣士…戦士?」
「魔法剣士は三次職ですよ…目標としてはアリですね」
私は妖精さんに魔法剣士になる道のりを聞いた。どうも戦士から剣士になって、魔法使い (属性何々(何属性の魔法でも可))を経て魔法剣士になるのだそうです。
中々に長い道のりです。
「特殊なものを除いて一次職は直ぐに限界まで来ますから、職業レベルを上げるのは難しくないハズです」
種族レベルと職業レベルは、別の経験値バーで分けられていると説明を受けた。
「ではボーナスポイントを振り分けましょう」
職業が決まったので、ポイントをふりふり。
名前 カエデ
性別 女
種族 黒猫族Lv1
職業 戦士Lv1
HP 47
MP 33
筋力 15
体力 13
器用 12
精神 13
知力 12
俊敏 10+1(11)
運 5
種族ポイント 0
スキルポイント 20
将来的に魔法も使う予定なので、平均的に振り分けた。体力と器用はどうしようか、武器の取り回しに器用が必要な気もするし、前衛だから体力もいるかな?っと思ったら運を削ってでも他に振らないとダメだった。
次はスキルだった。これは後から必要に応じて使える様に、ある程度取って於くように言われた。取り合えず10ポイント分使ってしまおう。
「それでは、いよいよグリモワールに移ります」
♪
「それではチュートリアルを終わります。この世界を心ゆくまでお楽しみください」
妖精さんが華麗な一礼を決めると、目の前が真っ白に染まった。
いつの間にか目をつむっていたみたい。
目を開けてみると海の上だった。でも安心して、ちゃんと船に乗っていたみたい。
「おお、目が覚めたかい!」
「おじさん、だれ?」
「おらぁ、船乗りさ。この船で人や物を運んでる」
波が船に当たる音で、おじさんの声がよく聞こえない。
「しかし、甲板で寝るなんて剛毅な嬢ちゃんだ。手にある本を見るに冒険者志望って所か!?」
「冒険者?」
オープニングはスキップしてしまったので、話に付いていけない。というかチュートリアルが思いの外長かったので、疲れているのだ。
「まぁ、あれだな冒険に生きる者達さ!」
「ふーん」
私はあんまり冒険には興味がない。
ただ友達とお出かけできれば良いのだ。
「よーし、上陸するぞ!」
船員たちが忙しなく動き、上陸の準備を始める。
「とにかく二人と合流しないと」
小さくファイティングポーズをとる。
その頭頂部にちょこんっと付けられた猫耳をピコピコと動かしながら。
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