第72話 下準備

 オンラインゲームに於ける集団戦は、幾つかに分けられる。


 NPCの敵性勢力(多数)との戦闘、クランやギルドの対抗戦を始めとしたプレイヤー同士の戦闘。そして、今回の様に強力なモンスターを討伐する場合などだ。


 俺がソロプレイを基本方針としているのは、人付き合いが不得手というのもあるが、武器の形状も関係している。


 パーティを組もうとすると、前衛が二人は欲しくなる。そうなると前衛同士で連携を取る必要が出てくる。しかし、大鎌では近接戦での連携が取り難い。以前組んだパーティでは、魔術師と二人で組んだパーティと杖を装備して後衛としての参加だった為、難しく連携を気にする必要がなかった。


 今回は、複数のプレイヤーと協力する必要がある。


「アリアの時より面倒だな…」


 『グリモワール・オンライン』絶望の象徴、隠滅いんめつのアリア。


 あのアリアより厄介な点は、デストラクターの能力に加えて、周りの状況が攻略の難易度を底上げしている所だ。


 ゴブリンゾンビの吸収を行うゴブリンデストラクター。もし【下僕召喚】のゴブリンゾンビを呼び出しても、吸収されて相手が強くなるだろだろう。魔装化使用後の攻撃で、カード化したゴブリンも倒された後にゾンビ化させられて、吸収しないとも限らない。


 そして、ゴブリンデストラクターは、アリアと比べると地面に接する面積が小さい。


 接近戦での攻撃は、場所の取り合いになる可能性が高い。


 まぁ、ただ殴られてくれるとは思えないけどな。


「グルグログラアァァ!!」


「あー、うるさい」


 ゾンビの吸収を終えたのか、外壁に向かって進み始めるデストラクター。


 クエストを張り出す掲示板には、ゴブリンデストラクターの討伐を求めるクエストが張り出されている。


 俺も他のプレイヤーと同様に張り出された後、直ぐにクエストを受けた。


 殆どのプレイヤーがクエストを受けた後、外壁の外へと戦いを挑みに行った。


 俺はと言うと、まだ戦闘に参加していない。


「どうやって戦うかなぁ…範囲魔法はプレイヤーを巻き込むだろうから禁止。接近戦も場所どりが厳しい上に、俺の武器だと取り回しが難しい。魔法で後ろから、魔法攻撃かな?」


 新しいスキルを入手するのも手だ。


「スキル習得…一覧は」


 習得可能なスキルの一覧を表示する。


「ん…これ使えるかな?」


 目に留まったのは、補助系スキル【罠】だ。


 このスキルの効果は、スキルレベル×3%の罠に関する成功率、威力の上昇。


「【罠作成】もあるのか…」


 でも【罠作成】は要らない。


 習得するのは【罠】だけで十分だ。


「後は仕掛けを御覧じろってか?」


 まだ下準備が残ってはいるが、もう構想は出来上がっている。


 そう時間がかかる事も無いだろう。


 スキルを選んでいる内にゴブリンデストラクターが、次々にプレイヤーを光に変えていく。


「…よし、『ホールニードル』」


 戦場に足を踏み入れると魔法で、次々と罠を設置する。


 罠は魔法で作り出した物だその為、この罠は設置後に自分の意志で自由に起動が可能だ。


「不発の心配はないし、出番がなければ魔法を解除すれば良い。元が実態のない魔力なだけに、普通の罠に必要な素材が一切必要がない。単純にコスト面でも優秀だな」


 デストラクターの攻撃は単調だ。


 回避するのは簡単なのだが、攻撃に回るのは難しい。


 だから、周囲に罠を設置する事に決めた。


「グルゥゥアァァァ!!」


 ゴブリンデストラクターの外見はゴブリンゾンビを吸収した影響か、所々腐敗している様だ。


 腕を振り回す度に肉片の一部が、振り落とされる。


「っと…設置する罠はこれくらいで十分か?」


 出来る事なら、本体に直接罠を埋め込んでやりたい所なのだが、足以外を狙うのは難しいだろう。かと言って、足に仕掛けても有効なダメージを与えられるかどうか…。


「そうだ、足を壊せれば…」


 手持ちの魔法製トラップでは、直接足に仕掛けても破壊するまでには行かない。


「頭を捻る必要がありそうだな」

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