第41話 街の英雄

 冒険者ギルドに着いて、報告を終えるとギルド内の空気が一変した。


 ギルドに詰めていたギルドマスターが、涙を見せて喜ぶような状況である。


「ありがとうございます。この場では何ですので、私の部屋へ」


 俺が討伐した訳ではないので、心境は複雑その物である。


 ギルドマスターの部屋に訪れるのは、これで二回目だ。


「まずは、盗賊団の討伐お疲れ様でした。報酬はこちらになります」


「待て、俺は討伐の確認をしただけだ。報酬を受け取る権利は…」


「はい、それが部屋にお通しした理由なのです。街の者たちは、街の中に盗賊団のアジトがあったなど知りませんでした。しかし、明日には知れ渡る事になりましょう」


 被害にあった商人や遺族に、連絡をしない訳にもいかないからな。それは分かる。


「街の者達には、すでに終わった事なのだと安心して欲しいのです。それが討伐者不明では…」


「より大きな危険がある可能性を告知することになる?」


 俺の言葉にギルドマスターが神妙な面持ちで頷く。


 確かにあのボスを倒したのが、モンスターである可能性もある。討伐者不明は、余計な不安を煽ることになる。


「クエストに関しましては、既に請け負われておりますので問題は無いでしょう」


「報酬はそのままか?」


 多少減額してくれても、一向に構わないのだが。


「はい、本来はクエストを受けた冒険者が山分けするのですが。まだ他の冒険者がクエストを受ける前でしたので、全額の…50000コルになります」


 全然減っていなかった。


 それより、多人数参加型のクエストだった様だ。


「…」


 机の上に前回よりも大きな布袋が置かれた。


「討伐者はジンと公表する。既に警備隊長へ連絡が行っている筈だ」


 既に連絡済なら、拒否権は無いか。


「…分かった」


 布袋を受け取ると所持金の桁が変わった。


 ギルドマスターの部屋を後にすると、あのUクエストで声を掛けてきたビットの姿が見えた。


 彼女に近づくと、クエストクリアのインフォが頭に響いた。


「君か…」


「礼を言う、おかげでかたきを討てた」


 前回出会ったときは、会話らしい会話をしなかったので驚いた。


「仇?」


「盗賊だ…」


「なるほど、君だったか…」


 どうやったのか知らないが、彼女が盗賊の討伐を行った様だ。


「名乗り出ないのか?」


「いい」


「報酬は要らないのか?」


 ドロップもあるのだが。


「必要ない。今日は礼を言いに来ただけだ」


「そうか」


 本人が要らないというんだ。無理強いも出来ない。


「…ではな」


 その言葉を最後に、目の前にいた筈の彼女の姿を見失った。


「…神出鬼没な奴だな」


 魔道書の強化をしてしまいたい所だが、明日は学校もある。


 そろそろ、寝るのが無難だろう。


 明日はスキルの見直しもやって置きたい。


 うん、早く寝よう。

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