第40話 盗賊団のボス ☆

 倒れ込んでいる警備隊長を助け起こす。


「驚いた…急に体が痺れて」


 放電を受けて痺れた程度で済んでいることが奇跡である。現実で起きたとして考えたら、間違いなくニュースになる事請け合いだ。


「総員、生き残っている盗賊の捕縛と被害状況の確認を急げ!」


「「ハッ!」」


 正気に戻って直ぐに指示を出す辺り、体に仕事が染みついているのが窺えるな。


 後は警備隊の面々に任せて、俺は休憩させて貰おう。


 腰を地面に降ろすとステータスを表示する。


「ポイント振らないとな」


 現実的に考えれば、戦闘スタイルに合わせてポイントを割り振るのだが、俺のプレイスタイルでは全てに振り分けなくてはいけない。


 運が低めになるのは、仕方ないけどな。


「これで良いか…」


名前  ジン

性別  男

種族  夜郷族Lv4

職業  死霊使いLv4


HP  90

MP  72

筋力  21+10(31)

体力  19+3(21)

器用  21+1(22)

精神  20+6(26)

知力  20+5(25)

俊敏  17+1(18)

運   10

種族ポイント  0

スキルポイント 4


グリモワール  収録の魔道書 (グロノス)


武器1     フィルカーズ・サイス

武器2     初心者の杖

頭       初心者の帽子

胴       初心者の服

腰       初心者のポーチ

足       初心者のズボン

靴       初心者の靴

アクセサリー

アクセサリー

アクセサリー


所持金      4800コル


スキル

武器スキル   【大鎌術Lv3】【杖術Lv2】

魔法スキル   【風魔法Lv4】【土魔法Lv2】【闇魔法Lv3】【呪魔法Lv3】

        【下僕召喚Lv3】【召喚魔法Lv2】

生産スキル   【鍛冶Lv3】【木工Lv1】【調薬Lv1】【皮革Lv1】

        【調理Lv1】【道具Lv1】

補助スキル   【魔書術Lv5】【採取Lv1】【採掘Lv1】【伐採Lv1】

        【鑑定Lv1】【識別Lv1】【召喚Lv1】【幸運Lv1】

        【剛力Lv2】【巧みLv2】【速足Lv2】

固有スキル   【有形無形Lv2】


称号『始原の魔道』『絶望を乗り越えし者』


 やはり運に割くポイントは無い。いくらレベル上限が無いといって、これでは良くない。ここの運営の事だから、イベントの報酬にランダム抽選って事もあり得る。


「隊長!」


「どうした!?」


 警備隊の方で何か問題があった様だ。尻を持ち上げて警備隊長のもとへと向かう。


「何かあったのか?」


「ああ、ジン君…。いや、あの放電の最中にボスを逃してしまった様だ」


「追うか?」


「当然、と言いたいところだが生き残った盗賊の数か多い。正直今の人数では、手一杯だ。警備隊からは人員を割けんのだ」


 もともと少数での作戦だったのだ。人手が足りないのは仕方がない。


 現状で自由に行動できるのは俺だけか。


「俺が行こう。足跡ぐらいなら追える」


「君もボロボロだろうに…仕方ないか。状況が状況だ、緊急クエストを発行する」


 警備隊長がそう宣言すると、一瞬でウインドウに視界を遮られる。


盗賊のボスを倒せ ランク5 緊急クエスト

 報酬 50000コル

  ボスがアジトから逃げ出した。

  このままだとイタチごっこだ、至急討伐してくれ!


「討伐か…」


「捕縛は無理だろう、逃がすくらいなら倒した方が良い。君のクエストは、私の権限で成功とする。報酬を受け取ってくれ」


 そう言うと警備隊長から、硬貨が詰まった袋を渡される。


「報酬は受け取る。それで緊急クエストの事だが…」


「消耗もしているし、君一人に頼む訳にもいかない。この下水道を出たら、直ぐに冒険者ギルドに使いを出す」


 後追いで他のプレイヤーが参戦する事になるのだろうか?


「分かった」


「先程の報告で、下水道の壁が破壊されているのが見つかった。その壁から通路が伸びているそうだ。恐らく、そこから逃走したのだろう」


 警備隊長からの話を聞き、例の脱出口に案内される。


「…気を付けてな」


「ああ、気を抜かない」


 一言、言葉をを交わすと壁の穴に飛び込んだ。


                    ♪


「ハァハァ、冗談じゃねぇ。何だってあの場所が…」


 何でも何もないか、ヘンデモの野郎がしくじりやがったんだ。


「クソッ!」


 なんで俺様が逃げ出さなきゃならねぇ。


 大体、アジトを移転してからまだ一か月も経ねぇってのに。


「あの商人を襲ったのが、運の付きか…」


 あの小人の商人がちゃんと死んでいれば、こんな事には……。


「あの商人?」


 あ?


 後ろから声が。


「それはビット族の商人で、私の大事な友人の事かな?」


 おかしい、ここはアジトにもしもの事があった時の為に作らせた脱出用の通路だぞ?


 ふざけるな、ここの事は誰にも言ってない。


 襲ってきやがった奴らに発見されたとしても、逃げるには十分な時間をあのネズミが稼いでるはずだ。


「君には死んでもらうよ。もう君の死には、理由がいらない」


「な、何を…」


 そもそもコイツは、襲って来た奴らの中にはいなかったはずだ。


「ま、まて」


「君は、命乞いをする相手を見逃したことがあったかな?」


 畜生、ここで終わりだってのか!?


 あの平和野郎に利用されたままで。


「グゥ!?」


 あ、ダメだ血が止まらねぇ。


 何人もこうやって送ってきたんだ。死ぐらい理解できる。


「ガハぁッ!」


 力が入らねぇ。


「そろそろ、あの人が来る。手柄はあの人のものだから…」


 女はそう言って、姿を消した。


                  ♪♪


≪討伐目標が討伐されました≫


 俺は現在、逃げたした盗賊団のボスを追撃すべく暗闇の中を進んでいる。従って俺が盗賊のボスに何かをした訳ではない。


「誰かがクエストを受けて…早すぎるか」


 俺としてはボスが倒されるのは構わない、一人で勝てる相手でもないしな。問題なのは討伐していないが故の疑問である。


「クエストは達成になるのか?」


 報酬がとても魅力的なのだ。金欠にはとても有り難い収入になる額なのだ。


「行って見ない事には、始まらないか」


 疑念を振り払い進むことにする。


 ボスより強いモンスターとか出ないと良いなぁ。


 細い通路を進む事、数分。盗賊のボスにたどり着く。なぜ場所が分かったのかと言うと、ボスの死体がそのまま残っていたからだ。


「ふむ、倒した奴はどこへ?」


 死亡を確認し終わるとモンスターと同じように、死骸が光に変換されていく。


「…ドロップがこっちに来た?」


 ドロップ品は、魔道書のページ二枚。


「随分破格な報酬だな」


 死体が残っていたのはドロップの受取先がいなかったからか、倒したのがプレイヤーなら相打ちした事になる。


「ふむ、折角だ貰っておこう」


 後は報告をするべくギルドに向うとしよう。グロノスの強化は、その後だ。

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