第35話 生産ギルド
「はい、こちらがクエスト報酬になります」
カルセドニーに戻り冒険者ギルドで報告を済ませる。
「ああ」
「このまま新しいクエストを受注なさいますか?」
このままクエストをこなすのも良いが、生産場所の確認と魔法の種類を増やしたい。
ここは素直に聞くことにしよう。
「いや、生産活動がしたい」
「でしたら、生産ギルドに向われた方が良いですね」
生産ギルドの場所を聞くと受付の女性に礼を言い、その場所を目指す。
「話に聞いた限りだとこの辺りだが…」
うろうろと歩いていると、声が聞こえてきた。
「こっちか」
建物の中に入ると受付が暇なのか本を片手に過ごしている。
ちなみに看板にはハンマーを掲げた小人の絵が描かれ、その上に生産ギルドと文字が書かれている。
「すまない」
「はい?」
受付が女性なのは、全国共通なのだろうか。
「生産施設を使いたいのだが…」
「まぁ、お客様ですの!?」
話しかけた受付の女性は、途端に目を輝かせる。
「ここ、カルセドニーは冒険者の国ですので…」
暇そうな理由を聞いて見た所、カルセドニーは冒険者の国である為、魔物素材は国の収入を大きく占めているのだそうだ。
素材を使うのならそれを生産が生業の国に売却するのが一般的だそうで、その生産国とは素材の関係からか仲が良く、作った装備などは冒険者が購入するので経済も安定しているらしい。
「この国での生産と言えば家具ぐらいでして…」
「それは、暇そうだな」
「はい…ですので現王陛下は消耗品くらい自国で生産すべきと、作り手を増やすため生産ギルドを作られまして」
入った時に綺麗だと思ったが、新築だったか。
「そうか、それで生産設備は使えるのか?」
「はい。ですが使用前に犯罪歴が無いかを調べますので、こちらに手を乗せて頂けますか?」
見覚えのある石版な気がするが、気にせず手を乗せる。
「はい、ありがとうございます。設備の使用は無料ですが、犯罪歴の確認は毎回行いますのでご協力お願いいたします」
「ああ、構わない」
つまりPKなどが生産活動できない仕組みなのだ。
是非協力しよう。
「今回は何の生産を致しますか?」
「鍛冶だ」
「解りました。鍛冶場は左奥の扉です」
礼を言い作業場に向かう。
「ふぅ」
扉を閉め、腰を下ろす。
インベントリから装備を取り出す。
「初心者の大鎌にゴブリンソード、ゴブリンランスか…」
ゴブリンソード 剣 ランク1 耐久値120 品質C
筋力+2
ゴブリンの持つ剣
ゴブリンランス 槍 ランク1 耐久値200 品質C
筋力+1 器用+2
ゴブリンの持つ槍
ゴブリンからは稀に武器がドロップすると聞いて楽しみにしていたのだが、ボロボロ出たのでレア感がなかった。
性能も低く、このまま使うのは緊急事態の時ぐらいだろう。
「折角の武器なんだから、使い道はあると思いたい…」
そんな訳でこれから試すのは、武器の素材化である。
まず剣や槍の持ち手を外して、刃の部分だけにする。それから刃の部分を鍛冶場で熱していく。形が崩れ始めたらハンマーで叩く、叩く、叩く。
道具が置いてあるのは、親切でいいね。
「気が済むまで、叩く、叩く、叩く…」
チュートリアルを思い出して、無心になってハンマーを振り下す。
ゴブリン鉱のインゴット 素材 ランク2 品質A
産地不明のゴブリン鉱石から作られたインゴット。
「ゴブリン鉱?」
鑑定を掛けてみたら思わぬ収穫だった。
特性なんかは予測しにくいが、新しい鉱石だ。
「産地不明はかなり気になるが…」
何にせよ、完成品から素材を取り出す実験は成功した。
「折角だからこのインゴットを使って何か…あ」
先ほど使っていたハンマーが、視界に収まる。
考えてみれば何時までもギルドで生産できる訳でもないだろう。今のうちに道具を作ってしまった方が良い気がする。
「ハンマーなら直ぐにインゴットに戻せそうだしな」
鍛冶場の炎と向き合い、1つの形を形成する。
「出来た…」
出来上がったハンマーに鑑定を掛ける。
妖精のハンマー 片手槌 ランク3 耐久値800 品質B-
筋力+5 器用+5 鍛冶修正(小)
ゴブリン鉱で作られたハンマー、妖精の力が宿る。
「えー!?」
確かに妖精ではあるんだが…。
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